2024年10月10日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年9月9日

 8月20日付ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)が、「金正恩の全面的亡命防止策は失敗」(Kim Jong Un Wants to Block All North Koreans From Escaping. It Isn’t Working)との解説記事を掲載し、最近の2019年以来となる現役北朝鮮兵士の韓国亡命の背景を解説している。要旨は以下の通り。

韓国側から見た北朝鮮とのDMZ(shin hyunsuk/gettyimages)

 韓国への亡命防止のため金正恩は、国境の壁増設、監視所武装化、地雷増設を指示したが、亡命は止まらない。8月20日の最新の亡命では、一人の北朝鮮兵士が徒歩で武装化された非武装地帯(DMZ)を越えた。現役兵士の亡命は2019年以来だ。

 最近の北朝鮮の特権階級からの脱北者の増加は、金正恩は最終的には権力掌握を脅かしかねない内部の不満と闘っているという外部からの評価を強めている。

 北朝鮮国民は、食料不足、経済・人権状況悪化に直面している。ここ数年政府は治安対策を強化し、亡命抑止のため現場射殺を指示。しかし国外で逃亡できるエリート層は機会を益々活用し、韓国統一部によれば外交官や海外留学生の亡命は過去最高だ。

 軍人の亡命は北朝鮮が強力で社会主義者の楽園だと示そうとする金の希望に風穴を開ける。体制は厳しい情報管理と軍の盲従、核開発による侵攻防止で成り立っている。

 北朝鮮は外界からほとんど孤立し兵士の勤務環境は厳しい。韓国軍によれば、DMZでの壁新設と地雷敷設のため多くの兵士が地雷爆発や熱射病で死亡している。

 亡命者定住支援センター前所長によれば、厳しい国境管理の下で北朝鮮人が極端な手段で亡命するのは、国内の不満増幅を示している。彼が言うには、国境の壁は金体制が国内の不満を認識し亡命防止を試みている証左だ。

 コロナ以前は毎年1000人以上の北朝鮮人が韓国に亡命していたが、韓国政府によれば本年前半は105人。23年は通年で200人未満だ。


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