2024年9月17日(火)

勝負の分かれ目

2024年9月16日

 起き上がった羽生さんの髪は、エッジが削り取った氷の粒をまとっていた。躍動感を漂わせた高く、幅のあるダイナミックなディレイドアクセルで魅せた。

被災地への思いを込めた全身全霊の舞がなされた

 プロとして遂げてきた進化を存分に込めたこの日の舞は、自分のためではなく、被災した誰かのために滑った。その思いは、共演した仲間の無良崇人さん、鈴木明子さん、宮原知子さんとともに、Mrs.GREEN APPLEの「ケセラセラ」の楽曲を熱唱しながら全力で滑ったフィナーレ後の言葉に凝縮されていた。

 「いま現在、つらい思いをされている方々もたくさんいらっしゃいます。『つらくないよ』って言いながらも、どこかで不便を抱えていたり、何か心の寂しさみたいなものを感じていたりする方もいらっしゃるかと思います。どうか、どうか、皆さんがちょっとでも温かい気持ちになりますように」

被災地へ恩返しがしたい

 羽生さんはプロ転向後、2年続けて東日本大震災で被災した故郷・宮城で座長を務めるアイスショー「notte stellata」に出演する。今回のショーも、同じように被災した金沢への思いから実現した。

 今年3月。演技会を主催するテレビ金沢の関係者によれば、羽生さんサイドから「能登のために何かできることはありませんか」という声が届いて実現した。羽生さんはこの日、報道陣の囲み取材にこんなことを口にした。

 「僕自身、(五輪で)金メダルを2個取りたいという気持ちの中の1つの大きな目的として、2連覇したところから被災地への支援や思いやりみたいなものをスタートしたいなという気持ちがあって、常に現役、競技を頑張ってきました。やっと自分がプロに転向して、徐々に、徐々に、被災地に心をはせることができるようになってきました。

 そういった中でも、自分はやはり、スケーターであるということが1番なので、演技を通じて、(被災地の)皆さんに対する支援や、感情に対する少しの一助になれないかなと思っています。『3・11』もそうですし、その時々で起こっているいろんな災害に対してもそうです。今回は、能登地方の震災に対してのチャリティーということでやらせていただきました」


新着記事

»もっと見る