2024年9月17日(火)

勝負の分かれ目

2024年9月16日

 自ら東日本大震災で被災し、一時はスケートどころではなくなった。

 それでも、大好きなスケートと向き合うことで、唯一無二の絶対王者と称されるキャリアを積み上げてきた。孤高の王者は競技者時代、自らを高めるために努力を重ねていたが、その先には、いつの日か、幼少期からの目標だった五輪2連覇の金メダルと、その実績で高めた知名度を生かし、被災地などで困難に直面し、そこから立ち上がろうとしている人へ、スケートを通じて元気と踏み出す勇気を届ける恩返しをしたいという思いが隠されていたのだった。

 自らが祈りを込めて滑るだけではない。6月には被災した石川・輪島市にも自らの足を運んだ。

被災地が自ら踏み出すために

 「ニュースや新聞で(テレビ)画面や紙面では、(被災地の)現状を何度も見る機会はありましたが、実際に目でみたときに、(震災の)傷痕が生々しく残っていたことに、とても衝撃を受けました。地元の方々も、『ここでこんなことがあったんだよね』『ここが壊れてしまったんだな』ということを、いまだに思い返してしまうようなことをおっしゃっていたり、『ここに行きたくない』という話も聞いて、すごく胸に刺さるものが、痛むものがあったなと思いました」

 一方で、こんな思いもある。復興への一歩は、被災地の人たちが自ら踏み出していくことで切り開かれていく。だからこそ、この日の公演は「挑戦 チャレンジ」と銘打ち、能登で活動する和太鼓虎之介や能登高校の書道部とともにつくり上げた。

 「(被災地で中学生と交流した際の話を聞かれ)子供たちに会った時に言ったことは、どんなに辛いことがあっても、いずれ時が来れば、何かはしなきゃいけないということです。どんなにやりたくなくても、どんなに進めなかったとしても、結局は進まなきゃいけない。そんなことを言いました。

 震災から半年以上が過ぎて、何ができるかとか、どんなことが進んでいるかとか、いろんなことを考えると思いますけど、来る時は来るし、来ない時は来ないから、もうしょうがない(仕方ない)って思うしかないところもあると思います。でも、“しょうがない”の中に、(被災者の)笑顔や、その時の一生懸命がいっぱい詰まっていたらいいなって思います」

演技会は、能登で活動する和太鼓虎之介や能登高校の書道部とともにつくり上げた

 自らの演技が、その背中を少しでも前に推し進める原動力になってほしいとの願いがこもった口調だった。


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