2024年11月22日(金)

Wedge OPINION

2024年9月24日

 もっとも、米国は、イランの核開発疑惑以外にも、①同国による民兵諸派への支援を通じたイスラエル権益への攻撃、②弾道ミサイル・ドローン開発の進展も問題視してきた経緯がある。仮に新しい合意が核問題だけを取り上げるものであればよいが、もしこの2点をも含む内容となれば米国が妥協できる余地は限りなく小さくなる。

 このため、イラン・米国間での交渉が前進するためには、交渉の適切な時期を見計らうことに加えて、核問題とその他の問題を完全に切り離すことが重要である。

日本はイランとどのような
関係を続けていくべきか

 混沌とした状況の中、主要7カ国(G7)でも独自の立場にある日本が果たすべき役割は何だろうか。

 一つのエピソードを紹介したい。23年8月、筆者が首都テヘランと南東部の港湾都市チャーバハールを訪問した際、イラン側のカウンターパートから「なぜ日本は米国の経済制裁に準じて、イランでのビジネスを縮小させるのか」と度々詰め寄られる場面があった。他の国は米国の政策にかかわらずビジネスを続けているぞ、とのいわば〝脅し〟である。

 ペルシャ商人の商魂たくましい交渉術ともいえるが、日本が米国の対外政策に追従しているかのようにイランの一部の人々の目には映っているのかもしれない。

 もっとも、日本とイランの歴史的関係から、ありがたいことに、今でも親日家は多い。日本の自動車・電化製品に対する信頼も厚いものがある。それでも、日本が米国の顔色ばかりをうかがい、対イラン、ひいては対中東外交を疎かにしては国家としての信頼を損なうことになりかねない。日本は原油の9割以上を中東地域に依存しており、中東が原油を売ってくれなくなれば、天然資源に乏しい日本はたちまち立ちゆかなくなることが明白である。

 こうした事情に鑑みれば、日本はG7のメンバーとして欧米諸国と足並みをそろえつつも、イランを含む中東諸国からの信頼を勝ち得る外交を展開する必要がある。時として、「白か黒か」ではない微妙な外交上の立ち回りも求められよう。イランとの関係では、従来の歴史的友好関係に立脚しつつ、二次制裁によりビジネスを展開できない制約の中でも、政府開発援助(ODA)を通じた経済協力、学術・研究分野での協力、積極的な広報・文化活動を組み合わせるなど、「日本のプレゼンス」増大に努めることが重要だ。

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Wedge 2024年10月号より
孤独・孤立社会の果て 誰もが当事者になる時代
孤独・孤立社会の果て 誰もが当事者になる時代

孤独・孤立は誰が対処すべき問題なのか。 内閣府の定義によれば、「孤独」とはひとりぼっちと感じる精神的な状態や寂しい感情を指す主観的な概念であり、「孤立」とは社会とのつながりや助けが少ない状態を指す客観的な概念である。孤独と孤立は密接に関連しており、どちらも心身の健康に悪影響を及ぼす可能性がある。 政府は2021年、「孤独・孤立対策担当大臣」を新設し、この問題に対する社会全体での支援の必要性を説いている。ただ、当事者やその家族などが置かれた状況は多岐にわたる。感じ方や捉え方も人によって異なり、孤独・孤立の問題に対して、国として対処するには限界がある。 戦後日本は、高度経済成長期から現在に至るまで、「個人の自由」が大きく尊重され、人々は自由を享受する一方、社会的なつながりを捨てることを選択してきた。その副作用として発露した孤独・孤立の問題は、自ら選んだ行為の結果であり、当事者の責任で解決すべき問題であると考える人もいるかもしれない。 だが、取材を通じて小誌取材班が感じたことは、当事者だけの責任と決めつけてはならないということだ――

 


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