処刑直後、金正日死去2年の中央追悼大会で崔龍海は、金正恩が「全軍の金日成─金正日主義化」を任務として打ち立てたと指摘し、「金正恩同志を首班とする党中央委員会」を死守すると誓った。人民軍を代表する演説とされたが、崔龍海はこれを統制する側の朝鮮労働党中央委員会の代理人として、金正恩の政治理念を植え付けようとしている。
2013年7月、朝鮮戦争休戦60周年で、戦没者の墓地竣工式に出席する金正恩氏(提供・AP/アフロ)
核兵器により体制の正統性を強化
以上を踏まえれば、13年3月の党中央委員会全員会議において決定された核兵器開発と経済建設の並進路線は、体制生存のために合理的な選択である。
経済改革に軍を統制する上でのリスクが伴う場合、先軍政治の補強手段として核兵器を同時に獲得する必要がある。
一般的に、核兵器は国防以外にも、国家としてあるべき姿を実現し、体制の正統性を強化する役割があるとされている。
憲法序文が述べる通り、「核保有国」としての地位が、対内安全保障のための先軍政治の「成果」ならば、軍を従わせる正統性の象徴としての機能を、体制は核兵器に対して期待しているのであろう。
指導者や高官が誰であるかにかかわらず、韓国による浸透の脅威を懸念する限り、核兵器を手放す動機が北朝鮮に生じるとは、ほとんど考えられない。
(注)本稿は執筆者の所属先を代表しない個人的見解である。
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