2024年12月13日(金)

Wedge REPORT

2014年1月21日

2年前の金正恩後継の際、集団指導体制に移行するとの見解が多く見られた。しかし、集団指導体制を支えるとされた人物は次々と消え、その中心・張成沢までも処刑された。朝鮮半島の政治と安全保障の専門家が、今回の張成沢処刑の背景を読み解く。そこから見えるのは、北朝鮮の韓国による内部への浸透に対する強い脅威認識と、体制の正統性を維持・強化するために決して核兵器を手放さない図式だ。

 金正恩の後継からわずか2年で、集団指導体制を支えるとされていた人物が次々と消えた。短期間に張成沢の処刑に至ったことは、金正日が世襲のために集団指導体制を整えたとの見方の誤りを示していたのではないだろうか。そもそも集団指導は独立した複数有力者の発生につながりかねず、「唯一的領導」、つまり指導者以外の勢力を認めないという体制の理念と相容れない─との少数意見も以前からあった。

韓国のテレビ各局が北朝鮮・張成沢氏の死刑執行を報じる様子。
韓国ソウル駅構内のテレビ画面(提供・Penta Press/アフロ)

 唯一的領導を支えるため軍を統制する概念が「先軍」であり、金正恩も先軍政治を継承した。先軍政治の背景にある脅威認識に基づけば、核兵器開発と経済建設の「並進路線」が体制生存の合理的選択となる。それを踏まえれば、経済改革が核開発や先軍政治の後退につながらないことが明白になる。

「先軍」政治の脅威認識

 張成沢を死刑とした判決文には、従来から北朝鮮の先軍概念で示されていた脅威認識が明確に表されている。判決は長文だが、その要点を押さえて見ていく。

 北朝鮮の脅威認識とは、(1)概念的浸透により内部に敵対者が発生すること、(2)軍への統制を喪失する恐れ、(3)最強の内部の敵としての韓国との競争である。先軍概念は「軍事優先」との訳語のイメージと異なり、外敵対処への専心よりは対内的な安全保障に注力している。


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