アメリカのドナルド・トランプ前大統領が2020年大統領選の結果を覆そうとしたとして起訴された事件で、司法省のジャック・スミス特別検察官が裁判所に提出した申立書の内容が2日、公表された。米連邦最高裁は7月に、在職中の特定の行為について大統領は訴追を免れるとの判決を出したが、同特別検察官は申立書の中で、トランプ前大統領の行為は「私的な犯罪努力」だったとして免責特権は適用されないと主張している。
トランプ前大統領は共和党の大統領候補として11月の大統領選に臨む。トランプ候補の裁判は大統領選前には予定されていない。
検察は165ページに及ぶ申立書の中で、トランプ候補は常に公的な立場で行動していたわけではなく、2020年大統領選をめぐっては、その結果を覆そうと「私的な犯罪努力」を行っていたと主張している。
この申立書は、トランプ候補の刑事裁判を進めようとする検察の取り組みの一環。
「公的ではない行為」に関しては免責されないとの最高裁の判断を受け、検察は起訴範囲を狭めることとなった。
検察は、トランプ候補は事件当時在任中だったかもしれないが、2020年大統領選の結果を覆そうとした取り組みのいくつかは、選挙活動や私人としての生活に関連したものだったと主張している。
スミス特別検察官は、「被告(トランプ候補)はほかの市民と同様に、その私的な犯罪についても裁判を受けなければならないと(裁判所は)判断すべきだ」と申立書に書いた。
今回提出された申立書では新たな証拠が提示され、検察側がトランプ候補をどのように有罪に持ち込もうとしているのか、これまでで最も明確に示された。
選挙結果をめぐる裁判は、トランプ氏が昨年8月に起訴されてから1年以上たびたび延期されてきた。
申立書には、当時のマイク・ペンス副大統領が、選挙で不正があったとするトランプ候補の主張に疑念を示し、選挙の敗北を受け入れるようトランプ候補の説得に努めたことなどが記されている。
また、2021年1月6日にトランプ候補の支持者たちが連邦議会議事堂を襲撃した際、ペンス氏が内部にいて、急いで安全な場所に移動したことを知らされた時のトランプ氏の様子も記載されている。トランプ氏は動揺することなく、「だから何だ」と言ったとされる。
議事堂では当時、2020年大統領選でのジョー・バイデン氏の勝利を認定する作業が進められていた。ペンス氏が認定作業の妨害を拒否したため、一部の暴徒は「マイク・ペンスをつるせ」と叫んでいた。
トランプ候補の反応
トランプ候補の弁護団は、最新の申立書の内容を公開しないよう働きかけていた。トランプ候補の選挙陣営スポークスマンは、「虚偽にまみれた」「違憲の」申立書だと述べた。
トランプ候補は自ら運営するソーシャルメディア「トゥルースソーシャル」に、「悪意ある攻撃」であり、「選挙前に公表されるべきではなかった」と投稿。
検察による「ひどい」不正行為だと非難した。
(英語記事 Trump 'resorted to crimes' to overturn 2020 election, prosecutors say)