自民党総裁選が終わり、石破茂元幹事長が高市早苗経済安全保障担当相を決選投票で破って総裁となり、30日に国会で首相に指名された。この総裁選を振り返ってみると、派閥の力が大きく弱まった中での総裁選であったこと、9月12日から27日までの今まで一番長い総裁選であったこと、9人というこれまでで一番多くの候補者が出馬したことが特徴だろう。
この中で、決選投票に残るとみられた小泉進次郎元環境相が解雇規制の緩和発言などで失速し(第1回投票で3位)、有力とみられた河野太郎デジタル相が低迷し(同8位)、ホープとみられた小林鷹之前経済安全保障担当相がある程度の成果を示した(同5位)。ここでの政策論争を、経済政策中心に振り返ってみたい。
議論された政策とされなかった政策
長い総裁選は、候補者の質を確かめる機会になる。小泉氏、河野氏の失速は、長い選挙戦の故でもあるだろう。また、河野氏の場合は、デジタル相などでの強引さが低評価にもなったとみられる。
9人の候補者で、下馬評が下の総補は上を落として自分が上に行こうとする。しかし、あまり攻撃すると、攻撃した候補が総裁になった場合に人事で思わぬ報復を受けるかもしれない。特に、3強が明らかになってからは、下から上への攻撃が緩くなったような気がする。
それでも解雇規制緩和への攻撃は止まなかった。小泉氏、河野氏以外は、解雇規制緩和に反対なのだから、7人が攻撃している訳で、仮に小泉氏が総裁に選ばれたとしても7人へのしっぺ返しは難しいから、解雇規制緩和への攻撃はやりやすかったのだろう。
小泉氏に対しては生煮え、準備不足、能力不足との批判が付いて回ったが、他の候補の政策でも生煮えは同じと思うところがあった。加藤勝信元官房長官の所得倍増論には、「実現できれば素晴らしいが、どうやって?」と、もっと聞いて欲しかったが、他の候補もあまり攻めていなかった。上位になりそうでない候補を引きずりおろしても意味がないので、9分の1しか時間を与えられない候補としては無駄なことに時間を費やしたくなかったのだろう。
経済政策ではないが、石破氏の日米地位協定の見直し、米国内に自衛隊の基地を作る、アジア版NATO構想など、できるのだろうかと心配になる。