2024年10月7日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年10月7日

 この報告は状況が限界に近付いていると警告している。歴史はこれだけ深い耽美主義が長期間続けば莫大なコストを伴うことを示している。我々の敵が、軟弱な米国政治層が米国の覇権を不名誉な最後に導こうとしていると確信していることが、元々相互不信を持つ中露イラン北朝鮮が、このタイミングで米国に共同で反旗を翻したことの理由だ。

 予言者エゼキエルは歩哨の仕事は敵が来たらトランペットを吹くことだと言った。国家防衛戦略委員会はその使命を果たしたが、より多くの煩いトランペットが必要だ。

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米国「敗北」の可能性も指摘 

 ミードには珍しく熱のこもった論説だ。彼の悲憤慷慨は米国が同時多発的な地域紛争または世界的規模の紛争(≒第三次世界大戦)発生の可能性を含む第二次世界大戦以降最大の安全保障上の挑戦に直面しているのにその認識が不十分なこと、結果米軍は紛争の発生を抑止し紛争が発生時に勝利すると自信をもって言うに必要な現在および将来の能力に欠けていること、危機的状況にもかかわらず、この報告に対し国内でほとんど無視されているという「危機感の欠如」の全てに向けられている。

 念のため、この「報告書」の事実関係について触れておこう。発端は、米議会が2022年度の国防権限法で22年にバイデン政権が発表した今の国家防衛戦略を分析・評価するため独立の委員会を創設したことにある。

 委員会は上下両院国防委員会幹部が指名した超党派の9人からなる。議長はJane Harman元民主党下院議員で、副議長は、国務省出身のEric Edelmanである。他は、陸軍参謀長代行を務めたこともあるJack Kene、CSBA理事長のTom Mahnken、その他サイバー、中東等の専門家からなる錚々たるメンバーだ。

 この委員会は、政府内外で種々の意見交換を行い、本年7月29日に、全会一致の最終報告書を発表した。早速この報告書要旨を読んで見たが、危機感に溢れたもので、同盟国の日本国民としては心配になる。


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