一方、習はソ連共産党のイデオロギー的、組織的規律の喪失に、より注目しているように思える。習は市民社会を粉砕した。中国の学者によれば、西側に支援されたNGOがソ連共産党を瀬戸際から追い落とすのに一定の役割を果たした。
2010年に中国で出版された書籍、『ソビエト連邦の真実:101の重要問題』は、ソ連の継承争いを分析し、ソ連共産党支配下における指導者の選択は、「酷薄な党内権力闘争で確定、それを決めたのは舞台裏の一握りの長老たちや、あるいは党内クーデターだった」、と述べている。
しかし習はそこから教訓を引き出したようには思えない。彼は後継者の育成に関心を示さず、望む限り権力の座に留まれるよう任期に関する不文律も変えてしまった。いずれ起きるポスト習への権力移行は、ソ連の動乱の歴史の記憶を再び呼び起こすことになるかもしれない。
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総力を挙げた共産党政権崩壊の研究
この記事は、面白い切り口ではある。ソ連共産党も中国共産党も本質は似た政党であり、中国共産党がソ連崩壊から必至になり教訓を学ぼうとしている点はその通りだ。しかし、記事が言うように、習近平になって学ぶべき教訓の中身が特に変化したとは思われない。
ソ連崩壊後、中国は総力を挙げてソ連・東欧の共産党政権の崩壊の原因究明を行った。実に膨大な作業であり、調査結果は政策提言とともに党中央の金庫に今も入っているはずである。
鄧小平は、学ぶべき教訓を次の3点にまとめている。第1は、ソ連共産党が統治を諦めたのが問題であり、何があっても共産党の統治を続けるべし、というものだ。第2は、ソ連は社会主義・共産主義を放棄したから失敗したのであり、イデオロギーは堅持しなければならない、ということだ。そして第3は、米国と正面から力比べをしてはならない、というものだ。
もし付け加えることがあれば、それはソ連式経済では駄目で、だから中国は改革開放政策を進めなければならない、ということだろう。
習近平は、1と2は堅持しており、3については、少々軌道を外した感はあるものの、正面から米国と力比べをする気はない。つまり、習近平は、鄧小平の基本は守っているということだ。