2024年11月5日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年11月5日

 第二の理由は、この数年、ドイツをはじめヨーロッパ各地でイスラム原理主義に基づくテロ事件や移民系住民による殺傷事件が相次いで発生したことである。ドイツでは移民排斥を主張する右派政党への国民の支持が強まっており、不法移民の流入阻止、不法残留者の送還に大きく舵を切っている。また、7月に発足したオランダ新政権も、難民・移民対策を最大の課題として位置付けている。

 この関連では、最近ドイツは国境で他のEU諸国との検問を再開したが、ポーランド、フランス、オーストリア、チェコ、スイス、イタリア、スウェーデンは既に同様の措置をとっている。

 ウクライナ難民に関しては、国外に逃れたウクライナ人約6百数十万人の内、ポーランドに約156万人、ドイツ約105万人、チェコ約48万人、アメリカ約27万人、イタリア約16万人、フランスに約11万人等が避難している(2023年2月現在)。

日本も対策すべきこと

 欧州で起こっている問題は、他人事ではない。近い将来、日本でも同様の問題が起こりうることを念頭において、対応ぶりを検討しておくことが重要である。

 日本は、深刻な人口減少・労働力不足に直面し、外国人労働者数は、この10年間に約2.9倍増の約205万人(23年10月現在)となった。また、今後数年間の内に、(在留資格)特定二号で定住・永住化する外国人材の大幅増(含む家族)が見込まれるところ、外国人材の「社会統合」を円滑にする施策を推進することが不可欠である。

 この関連では、外国人材受け入れ共生のための総合的対応策(19年以降閣議決定で毎年更新)などが推進されている。さらに、治安対策、経済安保対策の一環として、スパイ防止法の早期制定、中国の「国家情報法」への対応策の検討も不可欠である。

 日本への難民申請は、これまでのところ限定された人数にととどまっている。ただし、日本周辺の地政学的リスクが高まっていることを勘案すると、起こりうる有事を念頭に、避難民・難民対策を含む対応策を検討しておくことも重要と考える。

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