<日本のトップランナーが語る>
自動運転で〝勝つ〟ための要諦
自動運転の世界において、日本に〝勝ち筋〟はあるのか。最前線を走り続けるティアフォー最高経営責任者(CEO)の加藤真平氏に聞いた。
TIER IV(ティアフォー)創業者 兼 代表取締役社長CEO
慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程修了。博士(工学)。
カーネギーメロン大学などで博士研究員として勤務。2012年から16年まで名古屋大学大学院情報科学研究科准教授、現在は東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻特任准教授を務める。世界初の自動運転オープンソースソフトウエア「Autoware」を開発。
編集部(以下──)日本の自動運転は世界よりも後れているのか?
加藤 自動運転に関する技術は、すでにグローバル化しており、日米中で、技術そのものに本質的な差はない。ただ、米中に比べ、「実用化」の部分で差が出ている。実用化に欠かせない頻回な検証やデータの蓄積には、資金力や政策、人材など、技術以外の要素が大きく関わっているため、現時点では米国や中国の実用化までのスピードは、日本より圧倒的に勝っているという状態にある。
──産業振興や技術革新を目的とする自動運転のレベルと、地方の足として社会実装するために必要なレベルは異なっていると感じる。日本はどちらかに戦略を絞るべきか。
加藤 求められているレベル感が違うというのはその通りである。ただ、現状で米中との差が出ているからといって、社会実装のみに特化するのは時期尚早である。仮に、日本が社会実装に振り切った場合、数年のうちにL4を実現できるだろう。だが、自動運転の領域においては一番先に完成させた者が勝者になるとは限らない。自動運転技術を開発する米国のウェイモやテスラも、技術開発に莫大な金額を投じており、決して余裕はないはずである。
カギを握るのは持続可能性だ。持続可能な形でサービスを提供した者が勝者となる。もちろん先行者利益はあるが、今からでも日本は十分に逆転可能である。こうした計画は10年後を見据え、逆算して進めなければならない。10年後には、技術開発も社会実装も、自動運転のレベルはほぼ同等になっていると想定される。だからこそ日本は、産業振興や技術革新を目指しつつも、同時並行で今ある技術を活用しながら、社会実装を着実に進めていくべきだ。
──日本は米中のように巨額な先行投資ができない中、推進力を高めるには何が必要か。
加藤 政策は強力な支援になる。今、政府が掲げるべき目標は非常にシンプルだ。「まずはウェイモ、テスラと同じものを作れるようになる」こと。これは将来的にグローバルで勝つためにも必達の目標だろう。
現在、政府は協調領域と競争領域を示して技術向上のための企業間連携を促しているが、その線引きや程度は、当事者たちが決めるものだ。そのため私は「コミュニティー化」が連携強化の鍵になると考えている。シリコンバレーや深圳のように、テックに興味のある個人や組織が自然と集まり、議論だけでなく、共同実験でデータを共有したり、競技会を開催したりする「場」が日本にも必要だ。大企業や業界団体の参画を促すためにも政府のリーダーシップが欠かせない。