政権に就いたら、司法省を使って政敵に復讐すると宣言していたトランプに対し、バイデンが不安を覚えたのは理解できる。トランプが連邦捜査局(FBI)長官にすると宣言したカシュ・パテルが、バイデン親子を追及すると宣言していたことを考えれば息子への恩赦も理解できないわけではない。しかし、果たしてそれでよかったのだろうか。
揺らぐ司法の独立性
FBIとその上部機関である司法省はいま不安が広がり大混乱の只中にある。トランプは抜本的改革をすると言っており、戦々恐々としているのである。議会乱入事件を担当した検察官は解雇されるのか、そもそもそんなことが可能なのか誰にもわからない。
FBIは独立性を保つためにその長官は大統領を超えて10年まで務めることが許されている。その慣習を尊重してバイデンは、トランプが指名した長官を交代させなかった。しかし、トランプは、その自分が任命した長官を交代させると宣言している。
トランプのやり方に同意できない多くの捜査官は、辞職を考えているという。しかし、幹部は、辞職を選ぶのではなく、職務にとどまり、できるだけ組織の中であるべき方向に組織が進むよう努力すべきと呼びかけている。
トランプは、おそらく先日の宣言のように就任初日に議会襲撃事件についての大規模な恩赦を実施するだろう。しかし、その襲撃で命を落とした警察官もおり、多くの負傷者もでた。なによりその襲撃自体が民主主義に対する大きな冒涜である。
選挙の結果を暴力で覆そうなどという、民主主義をないがしろにする行為をした人々にトランプが堂々と恩赦を与える道をバイデンは開いてしまったのかもしれない。