多様な表現の形
喜八から薫陶を受けた、周防正行監督は語る。
「戦争というものは国家同士がやっている。そこにでていったら組み伏せられる。彼(喜八)なりの表現方法をとったのでしょう」と。
その表現方法のひとつとして、周防監督は大ヒット作の『大誘拐 RAINBOW KIDS』(91年)をあげる。誘拐された老婆が逆に警察を翻弄する。鴨居にかけられた戦死した息子などに呼びかけるシーンは胸を打つ。
喜八作品は多様で、シリーズとなった『江分利満氏の優雅な生活』(63年)は直木賞を受賞した山口瞳の昭和のサラリーマンの哀歌、『殺人狂時代』(67年)では、仲代達矢の三枚目ぶりが魅力だ。
世界が喜八を発見しているのが、とてもうれしい。
Wedge ONLINEでは、岡本喜八の生涯と作品に代表される「戦中世代」に焦点を当てたノンフィクション『おかしゅうて、やがてかなしき 映画監督・岡本喜八と戦中派の肖像』(集英社新書)の著者である前田啓介さんへのインタビュー記事『「生きてもせいぜい23歳まで」と言われた「戦中派」が戦後も続けた自問とは?』も掲載しております。