2025年4月24日(木)

経済の常識 VS 政策の非常識

2025年2月6日

訂正しながら生きていくしかない

 世の中が変わったことに気が付くか、気が付かないかが問題だった。それが改まらなかったのは、時代にずれていたということだ。つまり、私たちは訂正しながら生きていかなければならないということだ。

 間違えたら間違いを認めてやり直すことが大事だ。筆者も事実関係を間違えることがある。いくら気を付けていてもそういうことはある。間違えたら訂正するしかない。

 記事の取材で間違えたから「文春は廃刊だ」という声さえあることに驚く。「間違いを認めろ」と言い、間違いを認めたら「なんで間違うのか」と、さらに批判すれば、誰も間違いを認めなくなるのではないだろうか。試行錯誤や間違いを認めない社会では進歩が遅れるのではないだろうか。

 一方、政策の変更については、日本は寛大だ。石破茂首相は、党内野党時代に反安倍晋三首相の言論の一環として、アベノミクスの異次元緩和にも反対していた。ところが石破氏が9月27日自民党総裁選に勝利すると、日経平均は2000円近く下落した。慌てて10月2日、「現在(利上げをする)そのような環境にない」と発言すると株価は元の値に戻った。

 石破氏は、他にも、国会で十分な政策論議をしてから解散する、高額所得者の税率を低める結果となる金融所得課税の見直しを行う、東アジア版NATOを作るなどの発言をしたが、いずれも反故になっている。しかし、だからと言って辞任しろという声はあまり高くなっていないように思われる。

 筆者の感覚では、国家の重要な政策の変更に対して批判が集まらないのに、芸能スキャンダルの些細な訂正がこれほど批判されるのはバランスを失している。そう考えるのは、スキャンダル報道は民主主義にとって重要だと思うからだ。

実は民主主義を支えるスキャンダル報道

 CNNの報道によると、ロシアのプーチン大統領が2022年3月の演説で、「精神的に」西側と歩調を合わせかねない人々を非難。彼らは自分たちを「より高位の人種」と考え、「西側の集団」と1つの目標のために活動していると糾弾した。目標とは「ロシアの破壊」だ。「ロシア国民は常に、真の愛国者と取るに足らない裏切者とを見分けることができる。後者は偶然口に入ってきたブヨのように、吐き捨てるだけだ」と述べたとのことである。

 CNNは、続けて、プーチンとその取り巻きこそが、ロシアの腐敗と偽善を体現していることを示している。ぺスコフ大統領報道官の子どものうち、少なくとも2人は成長期の大半を西欧で過ごし、成人してからモスクワに帰ってきた。ペスコフ氏が2020年に役職で得た収入は17万3000ドル(約2180万円)だったが、60万ドルのブランド物の腕時計を身に着けているのが確認された、とのことだ。

 プーチン大統領自身も反西側の言説を主張する人物の偽善の例に漏れず、家族や近しい人々が西側諸国に住んでいる事実を記事は示している。パートナーの一人とされる女性は、プーチン氏の娘とみられる子どもを出産した数週間後、モナコにある410万ドルの邸宅のオーナーになった。長女のマリア氏は、モナコの330万ドルの邸宅で暮らしていると言われる。プーチン氏には他にも複数の子どもがいるとの噂がある。その全員が西側諸国に住んでいるとみられるが、クレムリンはそうした報道を常に否定している、とのことである(CNN『「クレムリンの子どもたち」、親が非難する西側で優雅な生活』2022年4月14日)。

 これらのスキャンダル報道がロシア国内で自由に行えれば、プーチンにとって戦争の継続は難しくなるだろう。ロシア国民は、西側の文化を否定しながら、その子供たちが西側の消費文化を楽しんでいる独裁者のために戦場で命を落とすことは避けたいだろう。


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