芸能界から引退した元タレントの中居正広さんと女性とのトラブルに端を発した一連の問題は、フジテレビが1月27日に2度目の会見を開き、会長、社長が退陣に追い込まれる事態となった。この過程で世間の注目を集めたことが、もう一つある。10時間を超える異例の長さとなった記者会見の是非だ。
191の媒体から400人以上が参加した「劇場型」の様相を呈し、感情をぶつけるように持説を展開した一部の質問者によって、会見のレベルの低さを指摘された。そもそも、フジテレビによる2度目の「やり直し会見」を招いたのは、最初に開いた同17日の記者会見が参加メディアを限定して行われたことに起因する。フジテレビの初動対応のまずさと同時に、強く踏み込む姿勢を見せられなかった新聞などの「オールド・メディア」への不信も根底にあった。
追及できなかったオールド・メディア
「質問に答えていないじゃないか」
フジテレビの「やり直し会見」は、質問者から怒号も飛び交う異様な事態となった。進行も滞る一部の不規則発言には一方で、メディアの中からも咎める意見が出た。フジテレビへの批判と同時に、世間の会見そのものへの嫌悪感が高まった点は、メディアにとっても後味の悪いものだった。
一部の新聞社が会見を総括した記事では、様々な質問者が、感情論や持説を長々と展開した質疑を批判的に報じる内容も目にする。しかし、フルオープン形式の会見となったのは、最初の記者会見でのマスメディアの追及の甘さに起因したことを忘れてはならない。
中居さんと女性のトラブルが報じられた経緯を改めて振り返ると、一部週刊誌で最初に報じられたのが昨年12月19日だった。同26日には週刊文春が、中居さんが女性に解決金を支払って示談したことや、フジテレビ社員の関与を報じた。
フジテレビは当初、社員の関与を否定するコメントを出すにとどめたが、年が明けて1月9日に中居さんが公式サイトでトラブルを認めて謝罪。さらにフジテレビの株式を保有する米投資ファンドが、調査を求める書簡を送付したことを発表した。こうした状況を受けて、1月17日に当時の港浩一社長(1月27日付で辞任)が出席した最初の会見が開かれた。
港前社長がこの場で説明までに時間がかかったことなどを謝罪し、会見は約1時間40分に及んだ。ただ、出席はフジテレビ側の要望によって、新聞社や通信社、スポーツ紙で構成する「記者会」に限られ、NHKや在京のテレビ局はオブザーバー参加で質問やテレビカメラによる撮影ができなかった。
朝日新聞によれば、記者会はオープンな形での開催を要請したが、拒否されたという。会見では、フジテレビは第三者の弁護士を中心とした調査委員会の設置を発表した一方、当該女性の人権や調査委での検証を理由に、回答を避ける発言も繰り返された。
こうしたフジテレビの対応が明らかになると、公益性の高い放送メディアとしての説明責任を果たせていないとして、SNS上などで批判の声が高まり、番組スポンサーなどの企業も、相次いでCMを見合わせた。企業イメージは地に落ち、数百億円規模の減収など大きなダメージを負った。これが、社の命運をかけた「やり直し会見」につながった背景である。