元タレントの中居正広さんとフジテレビジョンの女性社員とのトラブルに関する同社の対応の問題は、会長の嘉納修治氏と社長の港浩一氏が責任をとって退任して、新たに専務取締役の清水賢治氏が社長に昇格する人事が、28日から日をまたいで10時間を超えた記者会見の冒頭で明らかにされた。人事は28日付。
あわせて、日本弁護士会のルールに従った、利害関係人の弁護士ではない人員で構成される第三者委員会の発足と、3月末をめどにして最終報告が出される。
「中居問題」は、昨年末の週刊文春と女性セブンが、トラブルによって中居さん側が女性に対して示談の形で金銭を支払ったと報じた。かつ、女性社員がアナウンサーであり、フジテレビジョンの関係者A氏がとりもった日にトラブルが起きた、としていた。
〝過去最大〟のメディア・スクラム
前回の社長の港浩一氏による定例の社長会見が、放送記者会のメンバーに出席者を限定するとともに、ムービーカメラを入れることを拒んだために、今回の会見は原則オープンでかつ動画による中継もあった。ただ、女性のプライバシーを守るために、これに触れる質問があった場合にカットできるように10分間のディレーとなった。
この日の午後4時に始まった会見を筆者は、途中休憩が入った午後10時前までTBSのネットニュースで見た。休憩開けには、その前の質問の繰り返しと思われるものが多いと判断して、約6時間の会見視聴だった。
「メディア・スクラム」-メディアが取材対象にスクラムを組んだように押し寄せる現象。さすがにこの弊害について学んでいる新聞社やテレビ局の記者たちの質問は、事実関係を丁寧に聞いていた。
会見の参加者が事前の申し込みがなくとも、フジテレビジョンが受け入れたこともあって約500人といわれていたが、それ以上にも見えた。かつ、これほどのメディア・スクラムは過去になかったと思う。ネットメディアやユーチューバーも質問の機会が与えられた。もとよりこうしたメディアのなかにも、冷静な質問を試みる記者、ユーチューバーはいたのだった。
そもそも、中居氏と女性社員との間で示談が済んでおり、それにあたっては両者で秘密保持契約が結ばれている。その内容をフジテレビが明らかにすることはできない事情があった。
ところが、会見が長時間にわたるなかで、中居氏と女性の認識に関する質問が執拗に繰り返され、フジテレビの副会長の遠藤龍之介氏が「(中居氏は)女性とは異なる認識だった」と述べたことから、会場は質問者とそれ以外のヤジを飛ばすことで有名な記者らによって、会場は怒号に包まれた。遠藤氏の発言は、中居氏に女性の同意があった、と受け取られたのである。その後、この発言は女性のプライバシーを守るうえで不適切だったことから、発言はないと訂正する旨の説明もあった。
続いて質問にたったフリーの記者が「質問ではないが、中居氏と女性の見解を追及することは、女性にとって『2次加害』になります。会見に臨んでいる役員の方々や、記者の方々に年齢的に高い方が多いので、その点を理解していただいたほうがよいと思います」と、批判した。時代感覚のなさに警告を鳴らしたのである。怒号はぴたりとやんだ。同調する声や拍手まであがった。