2025年2月11日(火)

Wedge REPORT

2025年2月1日

現代におけるメディアの価値とは

 今、マスメディアに求められているのは、記者会見も含めた「報道の立ち位置」を明確にすることだろう。情報の正確性、冷静な分析と取材に基づく報道に徹していれば、週刊文春の訂正記事に翻弄されることもなかったはずだ。

 一方で、視聴者や読者に情報を伝達する媒体としての役割を全うするには、取材対象に対して毅然と向き合う姿勢は欠かせない。日頃から距離が近い取材対象者に踏み込んだ質問を躊躇してしまう経験は、新聞記者だった筆者も苦い経験として持っている。記者クラブ制度や特定の取材対象に番記者を置く弊害でもある。ネットメディアやフリーランスの中には、こうしたしがらみに縛られることなく、鋭く斬り込んだ取材によって高い評価を得た記者やジャーナリストも数多くいる。

 SNS上では、主張の異なるユーザー同士の「分断」が顕著となる傾向を強める。企業も世論に敏感となり、回転すし大手「スシロー」は、イメージキャラクターに起用してきた落語家の笑福亭鶴瓶氏が、当該女性も同席していたバーベキューパーティーに参加していたことが報じられると、総合的な判断を理由に、公式サイトから鶴瓶氏に関するコンテンツを削除した。今後の第三者委員会に委ねられる真相解明を含め、断片的な情報に左右されない状況を生み出す冷静な判断を提供する上で、マスメディアの果たせる役割はあるはずだ。

 企業の不祥事などによる記者会見は、今後も必ずあるだろう。その中で、メディアが会見に臨む姿勢はどうあるべきか。「やり直し会見」の批判の矛先の多くが、マスメディアとは違う質問者に向けられていたとしても、そのことで「オールド・メディア」の信頼回復の一助になるわけではない。

 ジャーナリストという資格は存在せず、個々の自覚がその価値を高めていく。読者や視聴者の「代表」として的確な質疑を行うことで、マスメディアは会見への限定参加という優越的な地位を獲得してきた。そこにあぐらをかくことなく、使命を果たしていかなければならない。

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