2025年2月11日(火)

Wedge REPORT

2025年2月1日

「訂正」に気づいていなかった会見参加者たち

 質問内容をみる限りにおいては、当該女性への人権やプレイバシーへの配慮が必要な状況とはいえ、マスメディアも含めて「1次情報」を入手するためのアプローチが不十分で、持ち合わせた質問の根拠は、ほぼすべてが週刊文春などの週刊誌報道に沿う異常な状況だった。

 その週刊文春編集部が1月28日、「フジテレビ社員の関与」に関して、「本記事(12月26日発売号掲載)では事件当日の会食について『X子さん(※中居さんとトラブルとなった女性;筆者注釈)はフジ編成幹部A氏に誘われた』としていましたが、その後の取材により『X子さんは中居に誘われた』『A氏がセッティングしている会の“延長”として認識していた』ということがわかりました。お詫びして訂正いたします」などと一部内容を訂正した。実際の会見では、訂正前の報道を前提とした質問が続出していたが、前提が覆されたことになる。

 もちろん、当該女性がA氏のセッティングしている会の“延長”と認識していたという点から、フジテレビのその後の対応はやはり問題であり、会見によって、女性の心身の回復やプライバシー保護の最優先を理由とし、コンプライアンス推進室や多くの役員に情報が共有されなかったことも明るみに出た。

 ただ、週刊文春の竹田聖編集長は毎日新聞の取材に対し、「元大阪府知事で弁護士の橋下徹さんから(第1弾と第2弾の記事内容の違いについて)指摘があり、訂正した」と答えている。そうであるならば、個別の取材の有無に限らず、橋下氏のように記事内容を精査できていたメディアや会見参加者すらもいなかったということにならないか。訂正のタイミングなどを巡って、文春側への批判の声が高まっているが、週刊誌報道に傾倒して質問に立ったメディアも、会見に臨むに当たっての取材力の低下や準備不足を浮き彫りにした。

 既存メディアは従来、芸能や政治の事件化されづらいスキャンダル報道に及び腰だった。警察による立件などの後ろ盾が報道の「裏付け」になるとの考えからだ。記事にする際は、週刊誌報道を受けて、政治家や芸能人が「辞任」「休養」「引退」などを表明した段階で報じ、「一部報道で~などのトラブルが報じられていた」などと盛り込んでいた。

 しかし、近年は「オールド・メディア」も、ユーザーのクリック数に応じた広告収入などを得るウェブへの記事出稿に精力的で、従来は消極的だった分野の記事も扱うようになった。ネットメディアや動画サイトの配信者だけでなく、「オールド・メディア」もインターネット上の記事出稿に際し、過激な質疑が繰り広げられる“劇場型”会見を批判しつつも、「会見詳報」などとコンテンツとして取り込んでいる実態がある。


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