2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年3月18日

 しかし、米国のアジアでの立場が、米国政治の機能不全故に深刻な損害を受けたことは無視できない。米国への尊敬は、経済力、開放性と統治能力、軍事力に基盤を置いているが、今日、それらは、さほど印象深いものではない。米国政府の閉鎖とかろうじて避けられた債務上限引き上げ危機は、アジア全域に否定的なメッセージを送った。オバマ大統領が2013年のAPECと東アジアサミットを欠席したのは、やむを得なかったが、米国の信頼性を傷つけた。これからの大統領のアジア歴訪は、米国のアジアへの関心が一時的でないことを示す。

 米国の安保、経済面でのパートナーとしての信頼性低下は、各国でナショナリズムが台頭する中で起こっている。それは領土紛争で明らかである。日中間での事件や事故の危険は、中国の防空識別圏設定で高まっている。我々は緊張緩和のために努力する必要がある。

 アジア・太平洋地域へのオバマ政権のコミットメントを強化することは必要である。演説や訪問は重要であるが、それらを行動で裏付ける必要がある、と述べています。

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 上記論説は「アジア・リバランスに回帰せよ」と題していますが、ポラックやベーダーのような人がアジア重視の重要性を論じてくれることは良いことです。緊急に対応しなければならない問題が中東に多いので、米国の注意がそれに引っ張られることはありますが、長期的な問題としては、中国の台頭に伴うアジアの重要性は疑いなく、今後もアジア重視にならざるを得ないでしょう。

 問題は、アジア政策の内容をどうするかです。同盟国を重視し、共産中国の異質性とその台頭がアジアを不安定化するおそれがあることを良く認識してアジア政策を展開するということだと思いますが、この論説は対中配慮し過ぎている嫌いがあります。中国と同盟国と平等に、とにかく問題を起こさないように望むということでは不適切です。

 日中韓の歴史問題についても、問題を煽っているのは基本的には国内政治や国際政治に歴史問題を利用している中韓であることを冷静に認識してほしいと考えます。日本は歴史問題を掻き立てたりはしていません。靖国神社に参拝するのは、国家のために命を捧げた人に哀悼の意を表するためであり、中韓が批判している軍国主義とは無関係です。

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