2024年11月25日(月)

Wedge REPORT

2009年5月20日

 この背景には、深刻な看護師不足と、若い看護師のモチベーションの低下がある。制度改定で看護師を多く揃える病院に診療報酬が多く支払われるようになったため、人材獲得競争が激化。「都心部の病院や大学病院、大手病院のなりふり構わぬリクルート合戦の影響が大きい。また、健診やドック中心で、時間外や夜勤がない医療機関へ若い人材が流れやすい」(同病院の谷山新次院長)状況だ。また「労働条件の改善が進まず、看護業務が魅力的な職業になっていない。そのため、若い看護師が地域医療の中心である民間病院を敬遠する傾向にある」(谷山氏)という。

 それに対し、外国人の候補生たちは、患者の目を見て話しかけ、手を握って安心感を与えるといった、相手の立場にたったケアが自然にできる。過酷な勤務状況で「つい、言葉遣いがきつくなり、患者をモノのように扱ってしまう」(病院関係者)なか、彼女たちの働きぶりに触れることで、「人のために尽くそうという初心を思い出した」という声が日本人スタッフからでているという。

 これだけ候補生たちの評判がいいのは、母国の敬老精神が強いことはもちろん、日本の1カ月の月収でインドネシアの1年分の給料が稼げるので「親族を養うために、強い覚悟を持って来日している子もいる」(介護関係者)という事情もあるのだろう。また、候補生の多くは「治安が良く、母国より仕事のある日本での定住を考えている」(病院関係者)らしい。

 介護福祉士候補生を2名受入れた特別養護老人ホームさわやか苑理事長の大矢清氏は「彼女たちは本国ではエリート。ぜひ、将来は施設を担う中核的な人材になってほしい」と期待を寄せる。日本語教育や就労指導といった適切な受入れコストを負担すれば、研修生たちは十分に介護・看護現場を将来にわたって支える存在になりうる。

村を挙げた受入れ

 八ヶ岳連峰の山麓に広がる長野県南佐久郡川上村。日本一のレタス生産量を誇るこの村は、人口約4400人の半数近くが農業に従事する農業立村だ。そんな山間の静かな村には、毎年4月になると大量の外国人がやって来る。その数は年々増加し、今年は遂に700人を超えた。

 この外国人たちも、外国人研修制度を利用した研修生で、その大半は中国東北地方出身の20代後半から30代の青年たちだ。研修生は1カ月間の集合研修を経て、5月から半年間、各農家に2~3名ずつ散らばり、畑での実務研修を行う。そして農閑期になれば計7カ月程度の研修期間を終えて、母国に帰る。

 最近は、職を失った日本人の元派遣労働者も農作業の求人に応募してくるが、農家からは「期待していない」「信用できない」という声が漏れてくる。この不況なら、日本人の確保がしやすくなり、外国人研修生に頼らなくてもよくなったのではないかと想像したくなるが、現実はむしろ逆のようだ。


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