切削機械大手のディスコは、5年ほど前から外国人採用を意識的に本格化し、現地直接採用を始めている。林登志男人財部長は「技術開発には国境がない。日本に拘っていたら未来はない。優秀な方であればどの国籍の方でも来てほしい」と強調する。毎年70~80名の新卒採用のうち、留学生と海外直接採用はあわせて1割強を占める。
説明会で関心を持ってくれた学生にはマンツーマンで会社のミッションを説明し、マッチングすれば、内定前に日本に招き、事業所などを見せて、日本で働くイメージをしっかりつかんでもらう。内定後は日本で約半年間、個人教師をつけるなどして十分な日本語教育を行う。そこまでのコストをかけるのは、「能力はそう変わらないと思うが、アグレッシブさが全く違う。40年間人事の仕事に携わっているが、今世紀に入ってから、急速に日本人学生の積極性が落ち込んでいるように感じる」(林部長)からだ。
バングラデシュの国費留学生(高校卒業時、トップ25位までに入らなければ資格がもらえない)を経て、富士通に勤めるハサン・イフティ氏の言葉は重い。「戦後、高度成長を遂げた日本人のハングリーさに憧れて日本に来た」――いまや日本人が外国人からハングリーさを見習わなければならなくなったとすれば、なんと皮肉なことだろうか。
期待される外国人介護士・看護師
「彼女たちの働きぶりをみると古きよき日本人を思い出す」――日本とインドネシアの間で締結された経済連携協定(EPA)により来日した、介護士・看護師の候補生を受入れた現場から聞こえた声だ。
来日した候補生は合計208名。その多くは、母国で看護師の資格を取り、実務経験もある。6カ月の日本語研修を積み、各施設と雇用契約を結ぶ。
滞在期間は介護士候補生が4年で、看護師候補生は3年。その間に、現場で補助的な業務に従事しながら、日本人と同じ資格試験を受ける。合格すれば、本人が望む限り日本に滞在し、親族を呼び寄せることも可能だ。受入れ施設は、日本人と同等の給料を払いつつ、日本語や資格試験の研修を行うことが求められている。
千葉県にある千葉・柏たなか病院では、5人の看護師候補生を受入れた。それに先立ち、外国人雇用支援室を設置し、日本語教師と、日本語教師の資格を持つ看護師、在日インドネシア人の看護助手を新規雇用した。候補生たちは午前中に看護助手業務をし、午後は国家試験へ向けた日本語の勉強時間を提供されている。同病院の理事長補佐である加田理恵氏は「人材確保のための先行投資。病院に定着し、貴重な戦力になってもらいたい」と言う。