2025年3月26日(水)

勝負の分かれ目

2025年3月9日

 ショーを終えて囲み取材の会場に姿を見せた羽生さんは、被災地への思いも口にした。

 「僕らも全身で、全身のエネルギーがなくなるほど酷使しながら演技をさせていただいています。これまでのアイスショーに対する意気込み、エネルギーの出し切り方のようなものが、今回はどんどんと他のスケーターにも伝播していて、こんなにやりきってくれるんだというぐらい、他のスケーターたちも(全てを)出し切ってくださっていました。

 もちろん、萬斎さんも全力で『SEIMEI』を演じきってくださいました。本当になんて言うんですかね。見に来てくださってる方々が、立ち上がって拍手を送ってくださったり、声援を送ってくださったりしている姿を見て、改めて、この『ノッテ・ステラータ』だからこそという思いも感じています。僕らが、震災の時に立ち上がっていけたように、その絆みたいなものがどんどん、どんどん広がっていってくれたら嬉しいなという気持ちでいます」

特設された被災地の特産品コーナー

 羽生さんのメッセージは、人々に元気を届け、勇気づけることができるが、それは言葉だけではなかった。開演前の会場は、羽生さんの思いに応えるように、来場客が被災地の特産品などに列をなしていた。今回は、羽生さんが昨年9月に金沢市で開催した「能登半島復興支援チャリティー演技会~挑戦チャレンジ~」のつながりから、石川・輪島の漆器や海産物を扱う出店も並んだ。

会場では、防災を啓発するコーナーも設けられた(筆者撮影)

 天然岩のりなどが瞬く間に売り切った60代の女性は、能登を襲った地震で家屋が倒壊し、移り住んだ仮設住宅もその後の豪雨災害で土砂がなだれこむ甚大な被害を受けた。「羽生さんが応援しているから、私たちも応援させてくださいと、たくさんのファンの方々にお買い上げいただきました。東京や全国からも会場を訪れた方々がいて、とても感謝しています」と語っていた。

 リンクに描き出す世界観や圧巻のフォーマンスだけではない。被災地へ寄り添う人格と品位が、「3・11」が近づくこの時期に開催される『ノッテ・ステラータ』の存在価値を一段と高めている。

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