2024年4月24日(水)

Wedge REPORT

2014年3月20日

集権型か分権型か
対立する住民利益

 集権型の大阪都構想を進めるのであれば、既存の住民の利益よりも、将来的に流入してくる住民の利益を考えた都市計画が必要になる。なぜなら、これまで大都市は、住宅を開発することで人口流入を誘い、その住民が地下鉄などの公共インフラを使いながら、経済活動をすることで発展してきたからだ。

 例えば、JR大阪環状線に沿った大阪市南部地域は、住民の高齢化が進み、老朽化した住宅も多い。ただ、都心に近くて利便性の高い地域でもある。大阪が大都市として発展しようと思えば、こうした地域に、新しく公営住宅を建てて安く貸し出すなどして、若年層を呼び込むことが考えられる。

 ところが、そうした開発は、既存の住民の利益と真っ向から対立することになりがちだ。開発のために土地の集約を進めれば、既存の住民は住み慣れた地域からの移住を余儀なくされるからだ。逆説的だが、だからこそ、大都市化には、集権型の広域行政体が求められる。特別区に権限を与える分権型は、住民に密着した行政サービスを重視することになるため、広域的な大都市としての発展よりも、いま目の前にいる住民に尽くすように動く。それは特別区という枠を設定し、権限を与える以上自然なことだろう。

 大阪が(人口流入に乏しい)定常型の地方都市として歩むことを決断し、大都市化よりも住民サービスを優先するのなら、分権型でもいい。しかし、その時は、日本が完全に東京一極集中の国に向かうことを意味する。もちろん集権的な広域自治体をつくったからといって大都市としての大阪が復活するかどうかはわからない。ただ、そういった大きな賭けをすること自体、今がラストチャンスかもしれない。

分権型に傾く都構想
中選挙区制の弊害も

 筆者の印象では、当初の大阪都構想は集権型を目指していた。しかし、最近では特別区への分権が強調されているように思われる。その理由は、昨年2月に法定協議会での議論が始まったことにあるのではないか。

 協議会では、区割りなどの設計図について、府市の首長のほか、委員(大阪府議会議員9人、大阪市議会議員9人)の賛成を得る必要がある。議員は、各選挙区から選ばれた住民の代表であり、個々の議員が有権者にアピールするため、地元に利益を誘導しようと考える。少なくとも、制度を変更することによって選挙区の特別区が財政的に「損」をするようなことは、大阪維新の会の議員にとってすら認められないだろう。いきおい、財政シミュレーションでは財源の平等な配分や分割の「効果額」ばかりが強調されることになる。そもそも、地元に根付いた議員の賛成を得るという法定協議会の仕組み自体が集権型の大阪都構想の実現を困難にしている。


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