2024年12月27日(金)

Wedge REPORT

2010年12月20日

 「本社機能や工場がなくなったと嘆くのは、高度成長時代へのノスタルジーに過ぎず、時代遅れの産業構造の延命願望の現れでしかない。ないなら代わりに新産業をつくればいい。そのためには、大阪市役所改革が必要だ」。大阪府特別顧問の上山信一・慶應義塾大学教授は大阪都構想の必要性をこう強調する。「大阪都構想」とは一体何か。狙いは主に二つある。一つは大阪府庁と大阪市役所を廃止し、新しく「大阪都」を創設すること、もう一つはその上で大阪都庁が産業振興や交通政策など、「広域的視点」に立った行政を行い、大阪全体の活性化を図ることだ。

上山信一氏(慶応義塾大学教授)

 「大阪は〝分断国家〟だ」。上山氏が指摘するように、大阪が衰退していった要因の一つに、「府と市という二つの〝国家〟が存在するために足並みが揃わず、産業構造の転換に乗り遅れた」(同)ことが挙げられる。「大阪府の約3割を占める266万の人口とGDPの約6割を占め、巨大な権限を持つ大阪市の了解なしには、大阪全体としての成長戦略の実現は困難」(同)なのだ。

 たとえば産業誘致。上山氏によると、大阪市は市内の25%の土地を保有している。そのなかには、稼働率が低く設備の老朽化が進む柴島浄水場や市営地下鉄の森之宮検車場、ごみ焼却場の森之宮工場などがある。ところが「職員の雇用を守る労組や議会、市役所がなかなか不要な施設と土地を手放さない。だが、市役所を解体し、都が土地を接収し税制面などで優遇すれば、知的高度人材の集まる研究開発拠点の整備も進むはずだ」と意気込む。果たして大阪都構想は大阪を浮揚させる起爆剤となるのか。しばらくはその行方に目が離せない。

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日本経済は大阪の二の舞いか(2) 産業構造変化を甘く見た大阪

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