
台湾当局はこのほど、台湾在住の中国人インフルエンサーの居住権をはく奪した。「中国が武力を行使して台湾を奪取する」という考えを支持する内容の動画を投稿したことを受けてのもの。このインフルエンサーは、台湾を離れるか、強制退去処分となる。
今回の動きは、台湾と中国の緊張が高まり、民主主義的な台湾島に対する中国の影響力をめぐって懸念が強まる中で起きた。
中国人インフルエンサーの居住権を11日にはく奪した台湾の內政部移民署(NIA)は、当該インフルエンサーの「行動は台湾の主権の排除を提唱するものであり、台湾社会では容認されない」と説明した。
台湾当局によると、「リウ」という名字のインフルエンサーの女性は、台湾人男性と結婚し、扶養ビザを取得して中国大陸から台湾に移住した。
女性は3月24日までに台湾を離れるか、強制退去処分になると、地元メディアは報じている。
NIAが15日に出した声明によると、女性は今後5年間、新たな扶養ビザを申請することはできない。
「台湾省」と呼び、「中国の不可分の一部」と主張
女性は台湾では「ヤヤ」という名前で、ソーシャルメディア上で知られた存在だった。幼い娘と一緒に、中国寄りのコメント動画を定期的に投稿していた。
複数の動画の中で、台湾を「台湾省」と呼び、「台湾は中国の不可分の一部」だとする中国政府の主張を繰り返している。
中国は、台湾は自国の領土の一部だと主張し、目標達成のために武力を行使する可能性を排除していない。一方で台湾は、独自の憲法と民主的に選出された指導陣を持つ独立国家を自認している。
女性は、「祖国の完全な統一は、台湾の人々が何を望もうとも必要不可欠だ」と、動画アプリTikTokの中国版「抖音(ドウイン)」に投稿した動画の中で述べている。女性には約48万人のフォロワーがいる。
「平和的な統一は、武力による統一よりもはるかに難しい」とも、女性は述べている。「これは、台湾の人々がどのような選択をするかにかかっている」。
言論の自由は台湾侵略提唱の「口実にならない」と
こうした投稿動画に対して批判が強まる中、リウ氏は2月、「決して引き下がらない」と抖音に投稿した。
その後、自分の動画を通じて「両側の良い面を広め、人々の間の溝を埋めようとしている」と述べた。
「私はただ客観的に分析し、自分の意見を共有しているだけ」、「台湾独立を推進する人々こそが、台湾社会に実質的な損害をもたらしている」と、リウ氏は主張した。
リウ氏の発言は、台湾の指導者たちから非難を招いている。台湾の内政部長、劉世芳氏は、言論の自由は台湾侵略を呼びかける「口実にはならない」とした。
リウ氏のように、台湾人と結婚して台湾で暮らす、中国大陸出身者は約36万人いる。こうした中国人配偶者の活動は、中国と台湾の緊張関係が高まる中、ますます厳しい目が向けられている。
台湾の頼清徳総統は先週、台湾に対する中国の影響や浸透を抑制するための一連の措置を発表した際、中国が台中交流を台湾「内部の分裂を引き起こす」手段とみなしているとして、交流を厳しく管理していく姿勢を示した。
(英語記事 Taiwan revokes visa of pro-Beijing Chinese influencer)