2025年3月31日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年3月24日

 このような誤解を排して議論する必要があるが、弱い保証とはいえ、ウクライナが「ブダペスト覚書」でロシアからの安全を確保しようとしたものの、それが守られなかったことは疑い得ない。ロシアは「ブダペスト覚書は法的拘束力を持つものではない」と述べ、自らの行動を正当化しようとしているが、外交交渉を経て作成された政治的文書における自らの約束を破ったことは明らかである。もちろんブダペスト覚書がなくても、ロシアの行為は国連憲章違反である。

 それでは、どのようにして停戦後、ウクライナの安全を保障するのか。ウクライナが求める北大西洋条約機構(NATO)加盟は実現しそうにない。NATOと切り離して、欧州の有志国で停戦監視部隊を派遣することは現実的に考えられる。一方、部隊の規模にもよるが、それがロシアの再侵略を抑止する機能を持ちうるかはわからない。

どうロシアから守るか

 問題の根幹は、プーチンがロシアの勢力圏として確立したいと考えている国々の安全をどのようにして確保するかとの点である。この問題は、ロシアの国力が弱体化しているとき、また、ロシアが西側諸国と親和的な関係を維持しようとしているときには顕在化しなかった。一方、ロシアが国力を強め、西側諸国と別の道を歩むと決めた後、顕在化することになった。

 この問題は、08年のジョージア・ロシア戦争で浮上したが、「どちらが武力行使を始めたか」の問題でうやむやになった。14年のロシアによるウクライナ侵攻(クリミア半島、ドンバス地方)はまさにこの問題を浮き彫りにしたが、西側の対応は微温的なものに止まった。それが今、問われている。米国の関与が期待できない状況では、欧州がどれだけのことができるか次第であり、それがプーチンの勢力圏回復の野心・野望を押しとどめられるかどうかである。

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