10年ほど前に中国国内で『共和へ向かう(走向共和)』というドラマが話題になったことがある。日清戦争を経て革命時代に突入し、最終的には中華人民共和国を設立するまでのプロセスを描いた大河ドラマだが、戦争の描き方が党プロパガンダと少し異なっていたため議論を呼び、一度放映されたきり再度放送されることはなかった。問題視されたのは、日本が国防の近代化のために明治天皇までも食事を我慢して国力増強に備えた歴史の教訓として描いた点であり、まさに今回取り上げた論評や代議員たちの提案と似た論調だった。
中国において国の発展、軍の近代化を阻害する大きな要因の一つが汚職だということはこれまで別の記事でも紹介してきたが、その後、軍のトップだった徐才厚・元中央軍事委員会副主席が身柄を拘束された、とか現職の国防大臣の汚職関与の噂さえも華僑系ニュースを賑わすまでになっている。
こうした汚職のほかにもう一つのポイントが機構改革だ。昨年秋の3中全会以降に俎上に上がっている軍機構改革は1985年の100万人削減、1997年の50万人、2003年の20万人と大ナタが振るわれた削減に続く4回目の兵員削減に当たる。兵員削減と機構改革は表裏一体であり、それに汚職という要素が加わり、機構改革をより困難にしている。こうした中で日清戦争の教訓を持ち出して機構や人員刷新を図ろうとするのは中国ではオーソドックスな手法だ。
習近平政権は政府、党中央に改革を深める指導グループ(全面深化改革領導小組)と称するタスクフォースを設置して一気呵成に改革を進めようとしている。軍にもこれに対応したタスクフォースを設置して、習近平がじきじきにその長に就任し、許其亮と範長竜という二人の中央軍事委員会副主席がその副組長になった(許は常務副組長としてイニシアチブをとるようだ)。さらにその下に分野別タスクフォースも設けられ、更迭された谷俊山が所属した兵站部門でも改革タスクフォースの会合が開かれた。
とは言いながら、日清戦争を云々する論調は今年1年を通じてこれからより盛り上がる可能性があり、日本人にとって不気味であり、うんざりだ。それでも私たちはこうした中で発せられる一つ一つの文章や指導者の演説を冷静に分析し、メッセージの意味や発せられるシグナルを忖度(そんたく)することが重要なことには変わりはない。
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