2025年6月16日(月)

日本人なら知っておきたい近現代史の焦点

2025年4月21日

関税をかけた本当のところ

 今回の赤澤大臣の受けた接遇は、米側の日本に対する高評価の表れとみてよいだろう。そもそも今回の関税は、米国内が製造業をはじめ苦しくなったから以前世話になった世界の国々は、借りを返してほしいという米国の願いであったろう。

 国内の製造業が没落して自国が苦しくなった時にふと周りをみると、第二次世界大戦直後に米国が気前よく助けてやった国々が調子よくやっている、誰のおかげでそもそも豊かになったのか、それなら以前与えた恩恵を返してくれないかとなったのが今回の関税である。

 200年以上前にも似たようなことがあった。それはまさにアメリカ合衆国がイギリスから独立した時のことである。イギリスが北米大陸でフランスと戦って自国の植民地人を守ってやり、巨額の戦費に自国が苦しくなってふと周りをみると、その守ってやった北米植民地が税金もかけられないまま調子よくやっていた。それでイギリス政府が植民地人に対してお茶や印紙に突然税金をかけたら反旗を翻して独立運動になった流れを思い出させる。

 ただ、ことの本質は関税ではない。何もしないでいても誰もこれまで大変お世話になっています、そのご恩を返させてくださいとやって来ないので、まずもってどうしたらいいでしょうかと世界の国々に集まって来させるには何がいいかとなったとき、関税を上げれば、それも少しでなく大幅に上げれば、どうしたらいいでしょう、とみんな集まってくると誰かが助言したのではないだろうか。

 ところが、関税を上げて世界の国々に対して「借り」を返してもらおうとしたら、予想外のことに、中国やカナダ、欧州などは譲らず今回のトランプ関税に対して対抗関税をかけ、さながら米国に反旗を翻しその勢力圏から「独立」しようとするがごとき様相となった。そのような態度は、トランプ的には「恩知らず」と感じられたに違いない。ところが日本は対抗関税をかけることもなく、中国の秋波にのることもなく、率先して交渉を願い出て来た、トランプには「初(うい)やつ」と映ったのではないだろうか。

「格下も格下」発言の〝効果〟

 もちろん、それだけで要求が鈍るほど交渉は甘くないだろうが、まず出発点としては好感情を引き出し成功と言ってよいだろう。自らを「格下も格下」と卑下する赤澤大臣の表現に国内からは批判もあるが、昨今このような発言は日本語であっても必ずトランプ大統領本人に伝わるし、彼が好むタイプの発言である。

 トランプにしてみれば、閣僚が来ただけのところに大統領が出て行って「いい思い」をさせてやったのを、ちゃんとありがたがって「感謝」しているということになろう。トランプ的価値観の枠内でのキャッチボールが重要である。


新着記事

»もっと見る