日本で〝エンタメ〟が産業としてこれほど騒がれた時期はかつてなかった。それを後押しするのは、12.0兆円(2010年)→11.9兆円(19年)→13.3兆円(23年)という国内コンテンツ市場のコロナ禍以降の成長ではない。その日本コンテンツの海外輸出が1.0兆円(10年)→3.7兆円(19年)→5.8兆円(23年)と急激に海外への波及力の効果を見せ始めているからだ。
マンガ、アニメ、ゲーム、映画、音楽─。様々なジャンルの日本発コンテンツはこの数十年で世界にどう広がったのか。
『進撃の巨人』(13年)や『僕のヒーローアカデミア』(16年)、『鬼滅の刃』(19年)、『呪術廻戦』(20年)など、マンガ原作のアニメが次々と公開され、北米・アジアを中心に世界中で視聴されるようになった。今や、全世界で見られているアニメのうち4分の1が日本アニメだ。
1.5億台と任天堂過去最大・最長のハードとなったSwitch(17年)の爆発的普及とともに家庭用ゲーム市場も活性化。ソフトのオンライン販売が普及すると、売り上げがほぼ海外市場である作品も3000万本近く生まれた。
映画では『名探偵ピカチュウ』(19年)や『The Super Mario Bros. Movie』(23年)など、知的財産権(IP)のハリウッド展開による成功例が続出し、24年には日本製の実写『ゴジラ−1.0(マイナスワン)』が米アカデミー賞を受賞した。動画配信ではNetflix『One Piece』(23年)が世界を席巻。『SHOGUN』(24年)のエミー賞受賞はNetflixに対抗するDisney+の過去最高視聴の作品となった。
音楽業界でも藤井風「死ぬのがいいわ」(20年)や、アニメ主題歌であるYOASOBI「アイドル」(23年)やCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」(24年)など、あらゆるジャンルを有する日本の音楽が〝ガチャポップ〟として世界に浸透し、日本のコンテンツ関連企業の海外展開も一気に再加速している。
背景にあったのは動画配信やストリーミングといったメディアシフトとコロナ禍のロックダウンによる消費性向の激変だ。21年以降、自国ハリウッド映画が無双していた米国ですら、Z世代など若者を中心に〝非英語圏〟のコンテンツを優先的に視聴・消費するようになった。その代表格が日本のアニメ作品なのだ。