安保激変

2014年5月19日

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小谷哲男 (こたに・てつお)

日本国際問題研究所 主任研究員

1973年生まれ。同志社大学大学院法学研究科博士課程満期退学。ヴァンダービルト大学日米関係協力センター客員研究員、岡崎研究所特別研究員等を歴任。専門は日米同盟と海洋安全保障。法政大学非常勤講師及び平和・安全保障研究所・安全保障研究所研究委員を兼務。中公新書より海洋安全保障に関する処女作を出版準備中。

「関与」と「宥和」は根本的に異なる

 このため、39年の太平洋の勢力図には、次の3つのシナリオが考えられる。まずは、中国が経済成長と軍事力増強を続ける一方、米国の国力の低下と内向き傾向が加速し、米中で太平洋の分割に向かうG2シナリオ。次に、中国で国内改革が成功し、日米などと協調路線を歩んで太平洋の緊張緩和が進む国際協調シナリオ。最後に、中国の経済が悪化して軍備増強にも歯止めがかかる一方、日米を中心に豪州、インド、ASEANなどと連携して中国との間で均衡を維持する勢力均衡シナリオだ。

 米中の相互不信は依然として根強く、現状が続けば勢力均衡シナリオに向かう可能性が高い。39年に向けた日本の戦略課題は、地域諸国の犠牲の上に成り立つG2シナリオを回避し、地域全体に利益をもたらす国際協調シナリオに向けて最大限の努力をしていくことである。

 安倍政権のこれまでの取り組みは今後25年を見通しても的を射ている。国力の源泉は経済力だ。アベノミクスを成功させ、長期的な経済成長の基盤を維持し、日本の影響力を維持するのである。一方、日本の防衛費の大幅な増額が見込めない以上、憲法改正を通じてより柔軟で質の高い防衛力を維持し、米豪印ASEANなどとの連携を深めて中国から開かれた海を守らなければならない。

 今後必要なのは、中国を国際協調に向かわせ、太平洋を開かれた海として維持する関与戦略である。関与と宥和は根本的に異なる。関与戦略の目的は、中国国内で強硬派の影響力を抑え、国際協調派が主導権を取れる環境を生み出すことである。

 現在、米中が新型大国関係で接近するのではないかと、日本は不安を覚えている。だが、米国の真意は中国の国際協調派との関与にあり、日本も米国と連携しながら地域諸国の利益を犠牲としない新しい国際関係を目指すべきだ。その中で中国との協力を深め、開かれた海が必ずしも中国の安全を脅かすものではないと認識させることが肝要である。

◆WEDGE2014年5月号より










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