2025年6月17日(火)

#財政危機と闘います

2025年6月6日

日本の少子化対策30年は〝落第〟

 日本の少子化対策が本格的に開始されたのは90年のいわゆる1.57ショックを契機とする。1.57ショックとは、90年に公表された一人の女性が生涯に生む子供数の理論値を示す合計特殊出生率がそれまでの最低値である丙午(ひのえうま)だった66年の1.58を下回って1.57まで下がったことを指す。

 その後、94年に文部・厚生・労働・建設各大臣(当時)で合意され、95年から実施された「子育て支援のための総合計画(通称エンゼルプラン)」を嚆矢とする。

 エンゼルプラン以降、数多の少子化対策が実行されてきたが、実は、その政策効果が検証されたことは今まで一度もない。厳しく言えば、これまでの少子化対策の効果を検証することもなく、財源を逐次投入して従前の少子化対策を機械的に踏襲し、拡充してきたに過ぎない。その結果が、出生数70万人割れという事態だ。

 実際に94年のエンゼルプラン合意以降の30年にわたる政府の少子化対策に成績を付けるとしたらどうなるのだろうか。筆者の独断となることは予めお断りしておくが、日本の少子化対策30年の成績は下表の通りとなる。

(出典)内閣府経済社会総合研究所「国民経済計算」、総務省統計局「人口推計」、厚生労働省「人口動態調査」、国税庁「民間給与実態統計調査」、国立社会保障・人口問題研究所「社会保障費用統計」、「出生動向基本調査」(夫婦調査)、「人口統計資料集」により筆者作成 写真を拡大

 出生数はこの30年間で55万人強減少している。合計特殊出生率は「低出生率の罠」の目安とされる1.50を大きく下回って1.15となっている。この点だけを見ても、少子化には歯止めがかからず、もちろん反転もしていないのだから、控えめに言っても落第とせざるを得ない。

 しかもこの間、家族向け社会支出は1.8兆円から10.7兆円と6倍も増えているにもかかわらず、少子化が加速している。少子化対策の成否は少子化対策につぎ込む金額の多寡と相関しないともいえる。


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