「取って配る」政策から「取らずに残す」政策へ
これまでの30年の少子化対策の総括を行うこともなく、また他国の政策を日本の現実と照らし合わせて妥当性を検討するでもなく、ただただ少子化対策にかける予算規模をターゲットにした量的な少子化対策では、少子化に歯止めがかからないのはある意味当然とも言える。その理由は、異次元の少子化対策を含め現行の少子化対策はもっぱら子育て世帯への支援にとどまっていること、子ども・子育て支援金という財源確保のための「増税」が2026年度から実施される見通しであることが指摘できる。
特に、未婚であったり、結婚していてもまだ子どものいない世帯にとっては、この子ども・子育て支援金は見返りのない独身税、子なし税として機能する。国民負担ばかりが増えることになり、先ほどのデータから考えると、今後も出生率の低下は不可避と見るのが自然だ。
少子化への危機感の高まりから政府の子育て関連支出は近年増額が続いているのにもかかわらず結局少子化が加速しているということは、取って配る少子化対策はすでに破綻しているということの雄弁な証左だ。
これまで少子化を一向に反転させることもできず、また同様の施策を一足早く実施したお隣韓国の失敗に目を瞑り、取って配る少子化対策を強化するのは日本滅亡への道といえるのではないだろうか。
少子化対策の一つとしてしばしば若い世代の所得向上が挙げられることが多い。政府は配ることで子育て中の若い世代の所得を増やすことに熱心なのだが、配るために取る現在の政策をやめれば、若い世代の手取り所得はすぐにでも向上するはずだ。
子ども・子育て支援金などという政策で、未婚であったり、結婚していてもまだ子どものいない若い世帯という結婚・出産予備軍からお金を取り、異次元の少子化をさらに加速させるのではなく、例えば国民負担率に上限を設けることで担税力を超えた負担から国民を解放し、「取って配る」のではなく「取らずに残す」政策への転換が急務だ。