これが李在明大統領の就任初日の動きだ。国情や制度が異なる日韓を同列で語ることに無理はあるが、自衛隊の最高指揮官である内閣総理大臣の初仕事は組閣であって、統合幕僚長からの報告を受けることではない。さまざまな権限を持つ大統領が何より先に行うのが軍の掌握ということは、韓国が置かれた厳しい安全保障環境を体現していると言えるだろう。
また、自衛隊OBの筆者にとって、国軍の最高指揮官が就任式前に戦死者を弔う姿勢は羨ましい限りだ。韓国では軍や戦死者に対する敬意に保守と進歩の別はないことを付言しておく。
在韓米軍移転報道の余波
6月2日と4日のヘッドラインは、英国国際戦略研究所(IISS)が主催したアジア安全保障会議(シャングリラ会合)を扱っている。この会議は、地域安全保障の枠組み設立を目的に毎年シンガポールで行われる重要イベント。そのため国防日報は1面で開会と閉会の様子を報じた。しかし、記事の趣旨は別のところにあると言える。
会合に参加した韓国の国防部政策室長は、米上下院団と面談して、これまで米韓同盟が有効に機能してきたことを強調した上で、韓国軍と在韓米軍2万8500人がともに抑止力を高めることで朝鮮半島と地域の平和に貢献しなければならないと伝えたという。
このあたり触りのない対話の背景には、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが5月22日に報じた在韓米軍の一部移転に関する報道がある。つまり、韓国側の狙いは、この報道の火消しにあると言える。その証左、国防日報は「(政策室長が)在韓米軍の現レベル維持のために(米議会が)継続的に努力してくれた」と言及している。
在韓米軍の存在が北朝鮮の南侵を思いとどまらせている。その事実を改めて思い起こさせる記事だった。