2025年12月5日(金)

Wedge REPORT

2025年6月11日

「目立つ」ではなく「効く」政策を

 水道基本料金の無償化は、短期的に都民の安心感を高める効果はあるかもしれない。しかし、その実効性、制度設計の妥当性、財源の構造、公平性への配慮という観点からは、慎重な検討が必要である。

 今回の無償化によって、どれほど熱中症リスクが軽減されたか、生活不安がどの程度緩和されたかといった明確な評価指標が示されておらず、政策の妥当性を検証しにくいという課題も残るだろう。

 「目立つ政策」が注目を集めやすい一方で、都民の生活基盤を根本から支える「効く政策」は、往々にして地味で地道な投資を必要とする。だからこそ、短期的な施策に流されることなく、持続可能性と公平性に根ざした政策判断が、今、求められている。

 東京都が猛暑対策として迅速に対応しようとした姿勢自体を否定するものではないが、本来、公共政策はその効果、持続性、財源の合理性を総合的に見極めるべきである。今後さらに気候変動が深刻化する中で求められるのは、目に見える無償化ではなく、生活の基盤を守るための本質的な政策選択である。

 都民に届く支援とは何か、次世代に責任ある投資とは何か。今回の施策は、その問いを私たちに突きつけている。

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