アーキテクチャ企業からプラットフォーム企業へ
そしてARMは単なる半導体のアーキテクチャ企業ではなく、今後はプラットフォーム企業として「コンシューマーソリューション全体にわたるAIの導入」を目指す、という。これをARMでは「AI民主化」と呼び、さらにはASR(アキュラシー・スーパー・レボリューション)を実現するためにさらなる効率的チップ開発に取り組む。エッジはまだ導入段階であり、今後様々な機器にエッジAIが装備されることで、人々の生活は飛躍的に便利・快適になる可能性がある。
イベント後半はNVIDIA、メディアテックからのパネリストを加え、AIの未来についてのトークセッションが行われた。
この中でバージー氏はまずディーリング氏に対し、「数々のイノベーションを実現してきたNVIDIAが次に起こす波とは?」と質問。NVIDIA側は「これまで巨額の投資を行い、AIモデルのトレーニングを行ってきたが、2025年はそれが実際の影響力に変わる節目の年になる」と語った。NVIDIAのジェンセン・フアンCEOは今回のComputexの中でAIインフラ構築、フィジカルAIの促進などをテーマとした基調演説を行ったが、まさにAIの実用化、という意味でNVIDIAが起こす数々の変化は見落とせない。
キング氏に対しては、数多くのコンシューマー向けデバイスを製造するメディアテックの立場から、AIは人々のデバイス利用にどのような変化を与えたのか、という質問がされたが、これに対しキング氏は「AIは人々がデバイスをより便利に利用するための大きな転換点になる」と語った。例えば3年前に購入したPCであっても、クラウド経由でAIサービスを利用できるため現在では使い勝手が飛躍的に向上している。しかしこれからはエッジAIの時代であり、「顧客はレイテンシー(遅延性)なしにAIサービスを利用できる、という点でより便利なものとなるだろう」という。
ただし、ここでもAI普及を阻む要素についてのディスカッションがあり、NVIDIAは「電力消費」、メディアテックは「有用な人材の不足」を挙げた。AIが広く普及するためには欠かせない要素であり、今後も半導体メーカーはさらなるパフォーマンス・パー・ワットの改善に務め、またAI普及のための様々な人材教育を行うことが不可欠である、と強調した。
3社が共通して語ったのはAIをめぐるエコシステムの重要性で、現在このエコシステムの中心にあるのが台湾だ。今年後半にはAIインフラの拠点も台湾で建設が始まる予定もある。日本が遅れを取らずにこのAI化の流れに追いつくにはどうすれば良いのか。一つのヒントはソフトウェアも含めたパートナーシップの増大で、AIに関するあらゆるソリューションをまとめ上げる力が必要となりそうだ。
