ソフトバンクが株式の9割近くを保有することで知られる英国の半導体企業、ARMは自社で半導体を製造するのではなく、設計デザインのみを行うファブレス企業として知られる。ARMアーキテクチャは様々な集積回路のプロセッシングコアとして採用され、特に携帯電話ではアップル、ファーウェイ、サムスンなどに採用され、ほぼ寡占状態にある。また任天堂スイッチなどのゲーム機器、デジカメやテレビなどの家電、無線LANなどのネットワーク機器、ハードディスクドライブの制御回路など、幅広く採用されている。
そのARMアーキテクチャが現在目指すのはAI時代に適応したスパコンやPC用CPU、自動運転用プロセッサなどで、その業績はAIブームもあって飛躍的に伸びている。同社上級副社長、クリス・バージー氏が5月に開催されたComputex Taipeiでのイベント発表によると、ARM製の新型サーバーチップは2025年末までに全体の5割に迫る勢いだという。
オン・デバイス、エッジAIが中心になる
バージー氏は演説の中で「AIはすでに単なるアイデアでなく、(社会の)推進力そのものになりつつある」と語った。AIは今や自動車関連、PC、モバイル機器、IoTなど様々な場所で採用されており、そのパワーによりクラウドからエッジへと移行しつつある。特にChatGPTなどの生成AIは生活のあり方そのものを変える存在になっている。
今後オン・デバイス、エッジAIが中心になることで、エッジがネットよりも強大になる、というスケールの変化が起こる中で、高性能のAI用チップへの需要はますます高まる。またデジタルだけではなくフィジカルAIにも注目が集まるが、その最大の例がヒューマノイド型ロボットになる、という。
ただしここでネックとなるのは消費電力の問題だ。AI社会を実現するためには多大なコンピューティングが必要となり、そのための電力消費が等比級数的に増える、との見通しがある。
ARMはこれに対し、元々消費電力が少ないARM製チップへの需要がますます高まる、としつつも、今後AIの発展をより支えるためには
- 消費電力の少ないプラットフォームの構築
- エコシステム全体をまとめ上げるパワフルなデベロッパーの存在
- パフォーマンス・パー・ワットのさらなる推進
が必要だ、と訴える。