ビジネスとは信頼の構築
このように信頼関係は「譲歩」や「情」によって築かれるのではなく、「相手の現実にどれだけ歩み寄るか」によって生まれる。担当者がただ「お願いする」姿勢だったなら、話は進まなかっただろう。
現場に足を運び、自分の目で見て、自分の言葉で語ったからこそ、相手も心を開いたのである。対話がかみ合わないとき、人はつい「分かってくれない」と感じるが、相手も同様に思っている。まず、こちらが分かろうとすることが関係改善の第一歩だ。
もう一つ大切なのは、共通の目的を見失わないことだ。両者は、「安全でおいしい商品を顧客に届けたい」という点で一致していた。価値観が共有されていれば、手段に違いがあっても対話は続けられる。むしろ、手段の違いは新しいアイデアの種にもなる。
「この人となら話せる」と思わせるには、姿勢と行動がものを言う。時間を惜しまず現場を訪れ、相手の立場を尊重し、自分の主張も根拠を持って丁寧に伝える。その地道な積み重ねが、難航する交渉の突破口になる。
ビジネスの本質は理屈の勝負ではなく、信頼の構築だ。信頼があれば、たとえ激しい対立があっても関係は壊れない。むしろその衝突を通じて、より強固なパートナーシップが生まれることさえある。
対話がかみ合わないと感じたときこそ、むしろ、信頼を築くチャンスだととらえたい。相手の目線に立ち、自分の言葉で、自分の足で橋をかける。それがビジネスの現場で生きる「商いのレッスン」である。
短期の儲けを選ぶと
一時の儲けは得られても
長期の繁盛は得られない
