<今月のお悩み>
取引先と意見に相違があり、難航している交渉があります。状況を打開したいです。どのような姿勢で臨むべきですか。
取引先と意見に相違があり、難航している交渉があります。状況を打開したいです。どのような姿勢で臨むべきですか。
意見が対立して話し合いが進まないとき、人は往々にして「正しさ」で相手を説得しようとする。しかし、現実のビジネスでは「理屈が通るか」よりも、「この人となら話ができる」と思ってもらえるかどうかが交渉の成否を分ける。

(ra2studio/gettyimages)
国内外に1300店舗超を展開する「無印良品」(良品計画)には、それを示す実例がある。
かつて同社が地方の食品メーカーと協業して新商品を開発していたとき、製造工程をめぐって意見が大きく食い違った。原材料にこだわる良品計画は、化学調味料を使わないレシピとしたい。だが、メーカーは保存性や生産効率の観点から譲れないと主張。話し合いは平行線となり、打ち切りもやむなしという空気が漂い始めていた。
このとき、良品計画の担当者は「もう一度、工場を見せてほしい」と申し出た。あらためて現場を歩き、製造工程の各段階での工夫や品質管理の実態を詳しく確認した。そして、見学後には、相手の立場に立って「この工程なら、こういう代替素材が活用できるのではないか」「この手間を減らすことで、別の工夫ができるのでは」といった具体的な提案を出した。
これにより「良品計画はうちの現場を分かろうとしてくれている」という信頼感が芽生え、話し合いは一気に進んだ。最終的に、保存料や化学調味料を使わず、かつ生産効率も保てる折衷案が生まれ、新商品は全国の店舗で販売されるヒット商品となった。