2025年12月5日(金)

終わらない戦争・前編沖縄

2025年6月24日

 前出の佐藤氏は言う。

 「旅の目的はあくまでも沖縄であり、その先にジャングリア沖縄、という順序でいいと思っている。多くの人に興奮・贅沢・解放感を体感してもらい〝パワーバカンス〟を味わってほしい」

 変化の兆しは他にもある。沖縄観光業をけん引してきた「おきなわワールド 文化王国・玉泉洞」。運営会社南都の2代目社長である大城宗直氏はこう話す。

 「かつては、短時間に多くの予定を詰め込む人が多かったが、最近では、時間的なゆとりをもって旅行をするお客様が増え、じっくりと楽しんでいる様子がうかがえる」

 こうしたニーズを踏まえ、おきなわワールドでは体験価値を高めるべく、サービス向上に注力している。

 「22年から入園料を300円値上げし、2000円に設定した。その代わり、これまで別料金だったハブ公園とチケットを一本化した。さらに、園内の3カ所にプチガイドを新たに配置した。

 こうしたサービス面の改善によって、お客様の目線も変わり、コンテンツを通して沖縄への理解を深めてもらえる。『沖縄の屋根は赤瓦が多いが、それは土に多く含まれる鉄分が焼き上がると赤色になるからだ』などの豆知識を知るだけでも体験の質は変わるものだ」

素通り観光、ザル経済、人材不足
改善のきっかけつかめるか

 好調に見える沖縄観光業だが、大きな課題の一つが人材不足だ。

 前出の前田氏が言う。

 「昨年3月、県が実施した未就労者の観光産業に対する意識調査によると、働きたくない層が4割にも達していた。各種調査からも、待遇面に課題があることが分かっている。

 沖縄観光業界全体としての数字は好調だが、県民の観光産業への就労意欲をもっと高めていく必要がある。この状況を変えるために事業者側は収益性を上げ、しっかりと従業員の待遇面を向上させていく工夫や努力が必要だ」

 内閣府沖縄総合観光施策推進室長の星明彦氏は「低生産性の状態から高付加価値のビジネスに転換できるかが課題だ。利用者目線を取り入れて、工夫ができている事業者は強く、価格競争力を持つことができる」と指摘する。


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