2025年12月5日(金)

終わらない戦争・前編沖縄

2025年7月2日

政府と沖縄県
蜜月関係からの転換

 大田は基地縮小と経済振興のためには政府との協調が必要だと考え、橋本は沖縄の苦難の歴史に理解を示すとともに、日米同盟の維持・強化のためには沖縄の不満解消が必要だと考えていた。その橋本が実現させたのが、96年4月の普天間基地の返還合意である。

 もっとも、普天間基地の返還は県内移設が前提であったため、移設に反対した大田は再び政府と対立、経済振興がストップする中で98年11月の知事選では保守から擁立された経済人・稲嶺惠一に敗れる。

 稲嶺は「軍民共用・15年使用」を条件に普天間基地の県内移設を受け入れて、当時の小渕恵三政権から経済振興や2000年のサミット会場決定を引き出し、政府と沖縄県は蜜月関係を築いた。

 ところがこの後、橋本や小渕のように沖縄に理解を示す政治家が政治の表舞台から去り、政府の沖縄政策は大きく変化する。小泉純一郎政権は、06年の在日米軍再編計画の中で、沖縄県との「軍民共用・15年使用」という条件を破棄して新たな普天間基地の辺野古移設計画を決定する。

 そして基地移設と経済振興を露骨にリンクさせる「アメとムチ」の手法で政府の方針を迫っていった。稲嶺県政は小泉政権の政策に反発し、沖縄県と政府の蜜月関係は終了する。

※こちらの記事の全文は「終わらない戦争 沖縄が問うこの国のかたち戦後80年特別企画・前編」で見ることができます。

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Wedge 2025年7月号より
終わらない戦争 沖縄が問うこの国のかたち
終わらない戦争 沖縄が問うこの国のかたち

かつて、日本は米国、中国と二正面で事を構え、破滅の道へと突き進んだ。 世界では今もなお、「終わらない戦争」が続き、戦間期を彷彿とさせるような不穏な雰囲気や空気感が漂い始めている。あの日本の悲劇はなぜ起こったのか、平時から繰り返し検証し、その教訓を胸に刻み込む必要がある。 だが、多くの日本人は、初等中等教育で修学旅行での平和学習の経験はあっても、「近現代史」を体系的に学ぶ機会は限られている。 かのウィンストン・チャーチルは「過去をさかのぼればさかのぼるほど、遠くの未来が見えるものだ」(『チャーチル名言録』扶桑社、中西輝政監修・監訳)と述べたが、今こそ、現代の諸問題と地続きの「歴史」に学び、この国の未来のあり方を描くことが必要だ。 そこで、小誌では、今号より2号連続で戦後80年特別企画を特集する。前編では、戦後日本の歪みを一身に背負わされてきた「沖縄」をめぐる諸問題を取り上げる。


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