2025年12月5日(金)

韓国軍機関紙『国防日報』で追う

2025年7月1日

韓国軍も頭を悩ます「転売ヤー」の存在

 ヘッドラインではないが、24日1面に「軍マート商品の転売根絶…『市場撹乱行為に断固対応』」という記事が掲載された。軍マートとは、駐屯地や基地にある売店(いわゆるPX)と全国121カ所の「営外マート」(6カ所の大型ショッピングモール含む)、ECサイトの「WA-Mall」を指す。軍隊の福利厚生施設であるため、利用資格は軍人と家族、10年以上勤務した退役軍人などに限られ、民間よりも廉価で各種商品が販売されている。

 記事は、24年12月の軍人福祉基本法改正で、軍マートの商品が転売禁止されたことを受けて、軍マートを運営する国軍福祉団と、ネイバーやクーパンなど主要なECサイトが加盟する韓国オンラインショッピング協会とが業務提携を結んだことを報じている。今後、ECサイトの監視や取締りを行い、転売が発覚した者は軍マートの利用ができなくなる。

 だが、軍マートからの転売は、不心得者の軍人や家族が転売ヤーになっているというレベルだけではなく、伝手を使った業者が軍マートから「仕入れ」を行う、組織的な横流しに近いスケールで行われているという。

軍人らが利用できる軍マートでは、卸売価格よりも安い値段で販売されている商品もある(韓国兵務庁)

 軍マートでは、スーパーマーケットや百貨店で販売されている食料品や洋服、スポーツ用品、日用品などが3割引は普通で、8〜9割引でも購入できる。特に化粧品は、ブランドの認知度を高めるために安く納入されるので、9割引以上で買える物もあるという。それらの中には卸価格を下回っている商品も相当にあるはずだ。

 このような状況なので、軍マート利用資格者と繋がることができれば、かなりの廉価で仕入れを行うことができるというわけだ。国家機関である監査院の調査結果には驚かされる。

 ある業者は22年から2年間、軍マート利用資格者の子どもから4億2000万ウォン分の商品を購入していた。また、別の業者は24年の1カ月で3万ウォン台の商品4000個以上を購入し、1個あたり8000ウォンから1万ウォンの利益を載せて転売していたことが明らかになった。

 韓国のECサイトでは、中古品や偽物でないことをアピールするために、あえて「PX」や「軍マート」と説明された商品を多く見かける。このような転売が問題となるのは、ある意味では韓国軍が軍人と家族、OBの福利厚生に努力していることの裏返しなので、元自衛官の筆者としてはただただ羨むばかりだ。

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