2025年7月16日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年6月27日

 フィナンシャル・タイムズ紙の6月5日付け社説が、李在明は大統領選に勝ったが、国民統一、対米関係、対日関係、経済など深刻な課題に直面、前途は「いばら」の道だと述べている。主要点は次の通り。

(YONHAP NEWS/アフロ)

 昨年12月に保守の尹錫悦前大統領は戒厳令を導入しようとしたが、今回の韓国の大統領選挙は民主主義を確認する出来事となった。左派の「共に民主党」(以下民主党)の李在明の明確な勝利により、尹錫悦の戒厳令の試みが否定されるとともに、戒厳令を明確に非難しなかった前大統領の所属する「国民の力」が拒絶された。この選挙結果は、国際政治と世界貿易で重要な部分を担う韓国に安定の希望をもたらすものだが、同国は国内外で深刻な困難に直面している。

 選挙後直ちに大統領に就任した李在明は就任演説で、今後直面する課題には「想像を絶する汗と涙、そして忍耐」が必要になると警告した。尹錫悦の戒厳令の試みとその後の弾劾は、韓国の政治分断を一層深めた。

 米国のトランプによる関税攻勢は、既に減速している韓国経済にさらなる打撃を与える可能性があり、トランプの気紛れな外交は北朝鮮に対抗するための韓米同盟の将来にも疑問を投げかけている。韓国の長期的な人口動態は悲惨に見え、その経済モデル自体が問われている。

 2022年の大統領選で尹錫悦に僅差で敗北した李在明は、今年に入りその政治的立場を中道へ移動し、「分断の政治を終わらせる」と誓った。国民統一への真摯な取り組みこそが、敗北した保守派候補の金文洙が述べた「大統領府と国会を民主党が掌握することの方が、戒厳令よりも韓国民主主義にとって脅威だ」との主張に対する最良の反論となるだろう。

 李在明は、国際関係において抑制と現実主義を示唆している。彼が直面する切迫する課題は、気まぐれな米政府と向き合い、関税引上げの脅威を回避することだ。

 韓国の左派政権は伝統的に、米国からの自立と中国や北朝鮮との関係改善を模索してきた。しかし6月4日、李在明は外交の「基盤」として米韓同盟を強化すると約束したが、中国については一切言及しなかった。また、「北朝鮮との対話チャンネルを維持する」との約束も、益々敵対的になる北朝鮮への方針を大きく転換することにはならないだろう。

 恐らく最も喫緊の懸念は、旧植民統治国の日本との関係を李在明が如何に扱うかである。尹錫悦政権下では、両国は和解に達し、民主主義国家同士として地域の安全保障と国際貿易秩序における協力強化の希望が見えていた。


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