2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年6月27日

滞っている米国との関税交渉

 韓国には「4強外交」という言葉がある。最重要外交は対米、対日、対中、対露外交とみなされている(対日、対中の順番は政権により変わるが)。

 韓国にとって最重要の課題は常に対米関係である。トランプ関税政策等のため、李在明にとりそれは今や緊急を要する問題だ。できるだけ早く米国と貿易交渉をせねばならない。

 大統領弾劾による国内政治の空白のため、対米首脳外交は約2カ月にわたり不可能だった。6月10日に通商交渉本部長を任命したが、閣僚はいまだ任命されていない。さらに韓国の大きな対米黒字のために、交渉も容易ではないだろう。

 対米関係では、安保関係が最も重要だ。そこでは、韓国の防衛費、米軍経費支援、在韓米軍、韓国の対中姿勢などが問題になる。

 伝統的に、特に革新政権には、米中の間でのバランス外交志向のDNAがある。今、韓国は米国から「安米経中(安保は米国と協力、経済は中国と協力)戦略」に対する一種の警告を受けている、との見方もある。

 今後、李在明は選択を迫られるかもしれない。在韓米軍については、米国内では削減案が検討されている。

 他方、中国からの圧力もある。経済は、中国に依存している。さらに、対北外交のためには、レバレッジとして一定の良好な対中関係が必要だ。他方、米国の李在明に対する姿勢が今一つ明確でない。

 対日関係につき、社説は「恐らく最も喫緊の懸念は、旧植民統治国の日本との関係を李在明が如何に扱うかである」、「李在明は過去に日本が歴史的な過ちについてさらなる償いをするべきだと明言している。23年には、尹錫悦と当時の岸田文雄との会談を『わが国の外交史上、最も恥ずかしい、破滅的な瞬間』だと非難した」、「4日に『米国・日本との三国協力を強固にする』と述べたことは、日本との二国間関係の改善を進めることに消極的な姿勢を示唆しており、不幸なことである」と述べる。その通りだろう。フィナンシャル・タイムズ紙は、韓国の対日関係の微妙なニュアンスをよくフォローしている。

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