李在明大統領は6月13日、就任後初めて韓国軍の部隊を訪問し、将兵を激励した。李大統領の言葉から窺えるのは、尹錫悦前大統領による戒厳とその後の混乱から、軍がいまだ立ち直れていないということだ。そのような中で韓国軍は16日、11月までの日程で、民間や省庁・警察などとともに後方地域防衛を目的とする「花郎訓練」を開始した。
李在明大統領の激励から窺える韓国軍の現状
李在明大統領の初めての業務が、合同参謀議長からの「統帥権移譲報告」であったことは既報のとおりだが、李大統領は就任から10日目の6月13日、韓国軍の部隊を初めて訪問した。
李大統領が訪れたのは38度線を警戒・警備する第25歩兵師団。駐屯地への訪問ではなく、北朝鮮を望む飛竜展望台に集まった将校ら約60人を激励した。将校らによる万雷の拍手と「ありがとうございます」で出迎えられた李大統領は、満面の笑みと握手で応え、次のとおり訓示した。
「皆さんがよく(国を)守ってくださっており、国民は快適な生活を享受しています。最近の様々なことのために、皆さんの自尊心が傷ついたかもしれませんが、国民は将兵の忠誠心を信じています。私はもっと険悪な状況を想定したのですが、第一線の指揮官たち、そして将兵の皆さんが特定の個人ではなく、国民への忠誠心で国家に対する自己の役割を果たしてくれました。
一部で将兵の退職が増え、士気が下がっているという話もありますが、国民は(軍が悪いとは)全く考えていません。過去の軍隊と今の軍隊は全く違うと考えています。これから軍の処遇や待遇、認識も変わるので、自負心を持って最善を尽くしてください。
皆さんは大韓民国が存続するための最も重要な役割を果たしています。その仕事についているという誇りを持って欲しいです。戦って勝つことよりも、戦わずに勝つことが重要で、それは皆さんの仕事です。さらに重要なことは戦う必要がないようにすることで、それは私たちのような者の仕事です」
国軍の統帥権者である大統領が初めての視察で、軍の退職者が増え、士気が下がっていることに言及しなければならなかった事実は、直視しなければならない。日本では公権力の行使に関して公務員個人の責任は追求されないが、韓国では非常戒厳宣布に関連して陸軍参謀総長など多くの軍高官が逮捕された。本稿ではその是非を論じないが、任務遂行を本旨とする軍人の立場からは、「やってられない」というのが正直な気持ちだろう。