2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年6月27日

 しかし、李在明は過去に日本が歴史的な過ちについてさらなる償いをするべきだと明言している。23年には、尹錫悦と当時の岸田文雄首相との会談を「わが国の外交史上、最も恥ずかしい、破滅的な瞬間」だと非難した。4日に「米国・日本との三国協力を強固にする」と述べたことは、日本との二国間関係の改善を進めることに消極的な姿勢を示唆しており、不幸なことである。

 李在明は就任に当たり、「険しい山を越え、いばらの茂みを切り開く」覚悟で、韓国の「もつれた」危機に立ち向かうと誓った。それは、恐らくそれ以上に困難な道となるだろう。

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就任早々、尹錫悦や野党を攻撃

 上記社説は、李在明が「今年に入り政治的立場を中道へ移動し、『分断の政治を終わらせる』と誓った」ことを紹介し、「国民統一への真摯な取り組みこそが、敗北した保守派候補の金文洙が述べた『大統領府と国会を民主党が掌握することの方が、戒厳令よりも韓国民主主義にとって脅威だ』との主張に対する最良の反論となるだろう」と述べる。そして新政権の直面する深刻な課題を指摘する。適正な評価だろう。

 国民統一の取り組みの重要性を強調しすぎることはない。しかし、李在明の高邁な言葉にもかかわらず、就任後一週間の間にも既に議会で李在明の与党は、大統領の訴追を大統領在任中は止めるとの法案を単独で委員会を通過させ、司法に圧力をかけた。

 それを受けてか、6月9日と10日に裁判所は李在明に対する公職選挙法違反控訴審と城南市の都市開発事業などを巡る背任罪等の裁判を憲法84条に基づき延期すると発表した。さらに、議会は尹錫悦の「非常戒厳」の捜査、金建希夫人の捜査等のための特別検察官設置を可決成立させ、6月10日の閣議はこれら特別検察官設置を決定した。

 就任演説では、李在明による尹錫悦や当時の与党に対する痛烈な批判が目立っていた。これらは悪い兆候だ。

 国民統一のためには、12月の不幸な出来事に至る韓国与野党の政治対立、議会を圧倒的多数で掌握する民主党等左派勢力による議会権力の乱用や政府予算案の一方的削減、政府高官の弾劾提訴の一方的連発など異常な行動についての与野党双方の責任を顧みることから始めねばならないだろう。

 デモクラシーの作動のためには、一定の良識と節度が必要だ。李在明には12月4日以前のことは頭にないようだ。

 韓国政治の前途は、多難に見える。そして、韓国政治の帰趨は、直に日韓関係に影響する。


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