韓国は6月25日、朝鮮戦争勃発75周年を迎えた。そのような中、これまで慣習的に退役将官が任命されてきた国防部長官に、李在明大統領は民間出身の国会議員を指名した。国会人事聴聞会を通過して任命されれば、64年ぶりの文民国防部長官が誕生する。他方、日本でも問題となっている「転売」で、軍も対応に乗り出した。
韓国で64年ぶりに誕生する文民の国防部長官
李在明大統領は6月23日、11個省庁の閣僚候補者を発表した。国防部長官には、与党・共に民主党の安圭佰(アン・ギュベク)氏が指名された。
候補者は国会の人事聴聞会を経て、閣僚に任命される。韓国の国防部長官人事は、朴正煕少将(当時)が1961年に起こした5.16軍事クーデター以降、退役将官(主に陸軍大将)の就任が通例となっていた。安圭佰氏が就任すれば64年ぶりの“文民”国防部長官の誕生となる。
このほか外交部長官候補者に文在寅政権で外交部第1・第2次官を務めた趙顕(チョ・ヒョン)前国連大使、統一部長官候補者に盧武鉉政権で統一部長官を務めた鄭東泳(チョン・ドンヨン)国会議員ら、過去の進歩政権の重鎮が指名された。また、尹錫悦政権下で「北朝鮮の指示を受けてスパイ活動」をしていたとして幹部が逮捕された、民主労総(全国民主労働組合総連盟)の前委員長である金栄訓(キム・ヨンフン)氏が雇用労働部長官候補者に指名されたことは、保守派に大きな衝撃を与えた。
このように進歩色が非常に強い閣僚人事だが、安圭佰氏はどのような人物なのだろうか。61年生まれの安氏は、全羅北道議会議員だった父を持ち、自身も大学院修了後、民主党系の政党職員となり、08年の国会議員選挙で初当選した。それから現在まで5期連続当選し、一貫して国防委員会に所属している。
15年の国政監査では、約18兆ウォンが投入される予定だったKF-X(次期主力戦闘機)の開発事業の乱脈ぶりを暴露したり、22年には「BTS法」(著名人の兵役特例)に反対したりするなど、国防族の重鎮として知られる。
安氏は指名直後、自身のSNSで「内乱後、“国民の軍隊”を再建しろという時代的使命の重さを厳粛に受け止める」と抱負を述べているように、李在明大統領による “粛軍”のために送り込まれることは明らか。安氏は自身が陸軍兵として兵役を務めたことはもちろんのこと、政治家や富裕層で子息の兵役忌避が問題となる中で、三人の息子も兵役を終えているように、軍と国民に対して恥ずべき点はない。64年ぶりの文民長官による軍の改革の手腕と行方に注目が集まっている。