1日の作業計画表を見せてもらった。作業開始時刻の欄には朝8時20分、8時50分、9時45分……とスケジュールが分刻みで記載されている。折り返し時間内に行う清掃が1日に9回、駅舎清掃などそれ以外の清掃作業も加わる。快適な列車内の舞台裏では岡本さんや手嶌さんをはじめとした清掃スタッフの努力があるのだ。
機械化も進む車両基地の清掃
そこにある各人各様の技
その日の運行を終えた回送列車が博多駅近くの車両基地に到着すると、本多さんたち博多新幹線事業所のスタッフの出番となる。駅ホームでの清掃と異なり、作業時間は40分程度。業務用室など乗客が使用しないスペースも含め、隅々まできれいにする。また、グリーン車には各座席に月刊誌『Wedge』と『ひととき』が配布されているが、これらを発売前日の深夜に最新号に置き換える。それ以外の日は、乗客が持ち帰った雑誌を補充する。「特集の内容によって持ち帰る冊数も違いますね」(本多さん)。毎月末日には車内広告の入れ替えも行う。
「以前は1両を2人で清掃していましたが、新しい清掃手法を積極的に導入することで、1人で済むようになりました」(本多さん)。16両編成の列車だったら、32人で行っていた作業が半分の16人で済むわけだ。
客室だけでなく、車両側面の洗浄作業も行われる。その様子を見学していたら、2台の機械が姿を見せた。1台目の機械が車両の側面に洗浄剤を散布すると、続くもう1台がブラシでごしごしと外板を磨き始めた。博多新幹線事業所にはそれぞれ8台ずつ導入されているというが、それらの効果は省人化だけにとどまらない。
「手作業によるブラシ洗浄は高齢者や女性には厳しい作業です。機械化によって体への負担を減らすという狙いもあります」。これらの機械はJR西日本中国メンテックが5年かけて開発し、2018年から運用を始めた。本多さんも開発チームの一員として開発に関わった。
側面洗浄の機械化は進んでいるが、先頭部分の洗浄は現在も手作業で行われている。以前、機械への置き換えも検討したというが、形状が複雑なため手洗いのほうが効率的だと判断した。高速で走る列車の先頭部分は昆虫などが衝突した跡が残り、側面よりも汚れが目立つ。夏場は特に多いという。