2025年7月10日(木)

古希バックパッカー海外放浪記

2025年7月6日

インターネットで学ぶ“スシの作り方”

 “アジア人”のシェフは30台前半の地元出身のチリ人青年。店は10年の歴史があるがシェフが2年前に来てからメニューの品目を絞り込んで効率化したという。そして世界的に人気でチリ人も大好きなスシを看板メニューにした。

 ファースト・フード中心のメニューなので観光客よりも地元客が多い。地元客中心なので冬季も営業しているという。メニューを簡素化して薄利多売で回転率を上げて通年営業することで収益を維持する戦略である。

 スシ(海苔巻き)の作り方はインターネットで画像を見ながら学んだという。確かに海苔巻きなら“巻きす”を使えば形状は整う。見た目がそれなりの海苔巻きなら握り寿司のような熟練技がなくても可能であろう。その安易さが世界的なスシ文化流布の一つの大きな要因であろう。

なんでもありの“スシ”、寿司ネタの王様はやはりチリ・サーモン

 3月7日。チリ・パタゴニアの北部に位置する港町プエルト・モントは19世紀にはチリ南部植民の拠点であった。現在ではチリ富士と日本人が命名したオソルノ山やジャンキウエ湖など風光明媚な名勝に囲まれている。

 昼前に市街地を歩いていたら“スシ・レストラン・バー”の入口で呼び込みをしていた20代のシェフに声を掛けられた。やはりネットの画像でスシの作り方を覚えたという。従って海苔巻き=手巻き(hand roll)のみ。

 地元プエルト・モント産フレッシュ・サーモン・ロールがお勧め。その他ネタとしてはハモン(スペイン風熟成ハム)、カニカマ、アボガド、チーズ、セロリ・人参などなど。カリフォルニア・ロール風である。メニューの“スシ・ロール・リブレ”(お好み巻き?)が目を引いた。シェフによると自由に好きな具材を客が選び太巻きを作るという。

ベネズエラ人が17人も働いている繁盛スシ・レストラン

ベネズエラ難民17人が働くメイ・スシの厨房でスシ・ロールの調理作法を見学する筆者とシェフのアンセル君

 3月8日。市街地の北に広がる閑静な住宅街を歩いていたら“メイ・スシ”というレストランがあった。市街地から離れた住宅街では観光客も来ないし経営が成り立たないだろうと心配しながらレストランに入った。

 来意を告げるとオーナー兼支配人の青年が応対。彼は5年前にベネズエラからプエルト・モントに来て3年前にレストランを開業。開店以来経営は好調で人手不足からベネズエラの故郷から親類・友人・知人の伝手でスタッフを呼び寄せ現在ではシェフ含めベネズエラ人スタッフは17人。営業時間は朝11時から夜11時まで。デリバリーが中心なので一日中注文が絶えないという。準備から後片付けまであるので勤務時間は朝10時から夜12時まで。スタッフは早番と遅番に分かれてフル稼働という。

 支配人の案内で厨房を見学。衛生管理が厳格でビニール製の帽子、靴カバーを着用した。厨房では3年前の開店時にベネズエラから来たと言う32歳のアンヘルが両手にビニール製の手袋をはめて真剣に作業していた。“巻きす”の上に海苔を敷いて酢飯を平らに盛っている。アボガド、サーモン、チーズを順番に海苔の中央部に並べる。巻きすで巻いてスシ・ロールが完成。

 よく手入れされた包丁でカットして一つを筆者にくれた。味見すると新鮮さもあり美味い!日本のスーパーで売っている太巻きより数段上だ。アンヘルはプラスチックの型を使った“押し寿司”も得意としている。押し寿司はチリでは珍しいのでプエルト・モントで評判になっているようだ。

 アンヘル自身も3年前にプエルト・モントに来てネットでスシの作り方を覚えた。その後、3人の後輩を指導して現在では4人が交代で厨房に入っている。

 次回はベネズエラ人の繁盛スシ・レストランの経営戦略、そして南米でのスシ文化の広がりについての見聞を報告したい。

以上

Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る