2024年11月21日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年4月30日

 つまり2014年4月25日という日、「尖閣の安保適用」を訴えた日米共同声明が発表されたその瞬間から、尖閣諸島に対する中国の軍事的暴走の可能性はほぼ完全に封じ込められたのである。もちろんそれはまさに、アジア歴訪を行ったオバマ大統領の狙うところなのである。

米軍のフィリピン回帰の目的は…

 日本での訪問を終えてオバマ米大統領はその足で韓国へ赴いたが、周知の通り、この韓国訪問はもともとアジア歴訪の中には入ってなかった。韓国政府は日本への対抗意識から強く「おねだり」したことで実現された「付録」程度の訪問なので、本稿の論ずる範囲からは除外とする。

 オバマ大統領の3番目の訪問地はマレーシアである。4月27日、大統領はマレーシアのナジブ首相と首脳会談後の共同記者会見で「アジア太平洋政策で、カギとなる戦略は東アジアとの結びつきを強めることだ。マレーシアは『中心』に位置している」とマレーシアを持ち上げてみせた。会談後に発表した共同声明では、南シナ海での領有権紛争に関しては米国が主張する「国連海洋法条約などの国際法」に基づく解決や、「軍事力行使や威嚇」への反対が盛り込まれた。それは、軍事力を背景に南シナ海への進出を強める中国をけん制する内容であることは、日本中のほとんどのマスコミと大半の識者の認めたところである。

 つまりオバマ大統領は、アジア太平洋の「中心的位置」にあるマレーシアを「中国封じ込め戦略」に加えることに成功したわけである。

 この成果をもって、オバマ大統領は28日、最後の訪問国となるフィリピンに乗り込んでアキノ大統領と会談した。そして、首脳会談に先立って、両国間で画期的な協定を結ぶこととなった。フィリピンでの米軍派遣拡大を可能にする新軍事協定に両国政府が署名したのである。

 この新協定によって米軍は今後、フィリピン軍の基地内に独自の施設を建設できるようになり、航空機や艦船の巡回を拡大できるようなった。

 米軍の施設建設候補地には米海軍がかつて拠点としたスービック地区などが想定され、派遣部隊の規模などとあわせ今後両国で協議されるが、とにかく冷戦終結後の1992年にフィリピンから完全撤退した米軍はこれで、フィリピンへの22年ぶりの回帰を果たしたわけである。

 22年前の米軍のフィリピン駐留が旧ソ連との冷戦に備えての措置であれば、今回の米軍回帰の意図はあまりにも明確なものであろう。現在、南シナ海のいくつかの島嶼の領有権をめぐって中国と激しく対立しているのはまさにこのフィリピンであり、その対立は軍事的衝突に発展する寸前まで激化していることは国際社会では周知のことである。ある意味では、今のフィリピンこそが、中国の南シナ海支配を阻止する最前線の位置にあると言えよう。


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